日本の旅館は、なぜ外国人から「イケてる」と思われないのか

内藤 忍

投資を検討している奥飛騨の温泉旅館。興味を持っている個人投資家の方々と一緒に、現地を視察してきました。料理(写真)もホスピタイティも素晴らしい宿でした。

周辺のホテル・旅館が苦戦し閉館が相次ぐ中、この施設だけは稼働率80%を超える驚異的な数字となっています。この日も満室で、食事だけさせてもらって、別の宿に宿泊しました。

人気の理由は、日本人の宿泊客を敢えてターゲットから外し、欧米を中心とする外国人に合ったサービスに絞り込んで提供しているからです。

日本人は、旅行に行くと現地で観光地を探し、計画を立てて見て回るようなスタイルを好みます。

一方で、飛騨高山に来るような旅慣れた欧米の旅行者は、長期で滞在し、旅館の中でのんびりと過ごすような人が多いのです。

彼らに必要なのは、英語でリクエストしたことに対応してもらえる旅館のスタッフのコミニケーション能力と、必要最小限のものをリーズナブルに提供するサービスです。

しかし、日本人宿泊客を対象にしてきたホテルや旅館が、いきなり外国人だけにターゲットを絞り込むには決断が必要です。

これまでの日本人顧客を「捨てる勇気」がないと、サービス内容を一気に切り替えることができません。それに、サービスを変えるにはスタッフの入替やサービスメニュの変更など、大きな負荷がかかります。伝統的な旅館であればあるほど、過去のしがらみから脱却することは難しいのです。

その結果、多くの宿泊施設は、日本人と外国人を両方をターゲットにし、どっちつかずの中途半端なサービスになってしまう。

それが口コミ評価を落とし、顧客を失っていくことになるのです。

また、日本人は旅行宿泊サイトのコメントに悪い点をあげつらう傾向があります。しかし、外国人は他の利用者に対する情報提供と言う視点を持ってコメントを書く傾向があるそうです。ネガティブなコメントばかり書いている日本人宿泊客は、集客上むしろ少ない方が良いとさえいえるのです。

インバウンドによる観光立国を目指すのであれば、宿泊施設は外国人が本当に望むサービスは何かを突き詰めて、提供する必要があります。

1万円そこそこのリーズナブルな料金で2食付。貸切露天風呂にも自由に入ることができる。大自然を堪能したい外国人が、世界中からネットの口コミでやってくる宿。圧倒的な競争力で、これから周辺の経営不振になった宿泊施設を次々に再生させていくことになりそうです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2018年7月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。