資産運用業界の「ロボアドバイザー革命」実現には何が必要か?

内藤 忍

コンピュータープログラムが投資家に資産運用のアドバイスを行うロボアドバイザーの残高が伸び悩んでいると日本経済新聞朝刊で報じられています(図表も同紙から)。

スマートフォンやパソコン経由で金融資産のアセットアロケーションが気軽にできるサービスです。しかし、大手4社(ウェルスナビ、お金のデザイン、マネックス、楽天証券)の運用残高は2018年6月末時点で1400億円にとどまっています。

記事では投資家の懐具合を見誤ったことが伸び悩みの原因と分析していますが、私は別の要因があると思っています。

1つはコストです。例えばウェルスナビのサイトで調べると手数料は、預かり資産3000万円までが年率1.0%(税別)、3000万円を超える部分が年率0.5%(税別)となっています。

資産3000万円以下の資産形成層にとっては1%は、かなり高い水準です。ネット証券で低コストのインデックスファンドを積立すれば、半分以下のコストに抑えることができるからです。ロボアドバイザーを使うような投資家はコストに敏感な人が多く、良いサービスと思っても、コストを考えて二の足を踏んでしまうのです。

一方の富裕層であれば、別のサービスとの競合になります。もし1億円の資産運用なら、ウェルスナビは年間コスト65万円になります。しかし、同じ1億円でも例えば資産デザイン・ソリューションズは、年間のフィーが10万円から30万円ですから半額以下。しかも、資産規模が大きくなっても料金は変わりませんし、金融資産以外のアドバイスも受けられます。

つまり、どちらの顧客層にとっても、コスト面で見劣りしてしまうのです。

2つ目は顧客のニーズに合ったサービスを必ずしも提供できていないことです。

個人投資家の投資対象は金融資産だけではありません。不動産屋それ以外の実物資産も組み合わせた資産運用アドバイスを求める人が多い。これが私の実感です。また、以前のブログ(ロボアドバイザーはロボコップを見習うべき)にも書きましたが、多くの個人投資家は画面に表示される無味乾燥な分析結果だけではなく、コンサルティングによる対面でのコミュニケーションに価値を感じます。統計的に「正しい答え」だけではなく「納得感」を得たいと思っているのです。

お金のデザインは、私が社名をネーミングさせてもらったこともあり、今もとても思い入れのある会社です。開業当初はご縁がありましたが、その後残念ながら大人の事情で疎遠になってしまいました。

資産運用業界の第3の革命とも言われたロボアドバイザーですが、革命はまだ起こらず、これからが正念場です。成長阻害要因を修正して、日本の資産運用業界に大きな変化をもたらす業界に成長することを期待します。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2018年7月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。