石破氏新刊『政策至上主義』は姿勢論に終始で政策なし

石破 茂
新潮社
2018-07-13

 

自民党総裁選挙への出馬を模索する石破茂氏が、「次期総理候補No.1からの直言」「この国には解決策が必要だ」と帯で高らかにうたった『政策至上主義』(新潮新書)という著書を7月13日に刊行した。

いうまでもなく田中角栄は「日本列島改造論」をひっさげて総裁選挙に出馬したが、その勝利には著書の出来の良さがおおいにものを言った。そういう意味でこの書籍にはおおいに期待したのだが、出来はどうだっただろうかといえば、本としての出来はいい。文章がよく練られていて分かりやすい。石破氏の人柄はよく出ていると思う。

ただ、タイトルや帯のキャッチは内容と一致せず、まったく、頓珍漢もいいところだ。全般的に、丁寧に説明し、議論してもらうという姿勢論に終始して、政策らしきものは何もないに等しい。

しいていえば、憲法第9条第2項は変更されるべきだということと、集団的自衛権の行使に制限があるという安倍首相の考えはおかしいのであって、そんなものはないということ、それを前提に、日本がアメリカを守る役割も積極的に果たし、そのかわりに日米地位協定などによるアメリカ主導の体制を緩和して日本の主導権を高めるというような姿勢だろうか。とうてい、朝日新聞や第九条信者を納得させられるはずがないが。

地方創生は、大臣もやって得意分野のはずだが、「東京と地方とを対立的にみるべきでない」「地方は農業などの生産性を上げて所得を増やす」「地方も頑張って可能性を見出すように努力すべきだ」という<精神論>に終始している。

福祉については、画一的な福祉より選択の幅を広げるとし、教育については、仕事に直結するような実用性を重視すべきだということのようだが具体性には乏しい。

論理的に丁寧に説明すれば分かってもらえる、マスコミを攻撃するのはやめたほうがよいという低姿勢論を展開しているが、日本で大きな改革が進まなかったのは、そういう姿勢だったからではないだろうか。

これまで立憲民主党や朝日新聞など偽リベラル系の攻勢に相手に花を持たせるようなことばかりやってきたのを、おかしいものはおかしいと指摘する安倍首相の姿勢は若い人たちなどからはそれなりに評価されていると思う。

防災省の設立を訴えているが、新しい役所をつくって対策を強化するというのは、いちばん安直で生産性の高くない政策提案だ。だいたい、平常はきたるべきときの準備だけしてたいして働かないような小さな組織が、危機のときに急に忙しくなればパンクするだけで素晴らしい仕事ができるはずなどないのである。

そのほか安倍内閣の強引なやり方に対する批判は、部分的に当たっていないわけでもないが、その批判を、普段、真正面から党のなかでするのでなく、都議会議員選挙や総選挙のまっさなかに朝日新聞のような自民党に対して批判的なメディアでタイミング良く登場して味方の足を引っ張るという手法が“丁寧で論理的な批判”だとはとうてい受け取れまい。

そんななかで、大臣が多忙すぎることを批判し、国会への出席なども減らす提案もしているが、それは前向きの話だ。