セブンイレブン「100円ビール」突如中止の謎

セブンイレブン・ジャパンが店頭の専用サーバーで提供する100円生ビールのテスト販売を急遽中止しました。

セブン側の説明は「想定を大幅に上回る反響があり、需要が大きく高まった際の販売体制や品質保持が難しくなる可能性がある」ということですが、テスト開始の直前になっていきなり中止となったことで、その背景に何があるのかが気になります。

飲酒運転につながるとか、未成年の飲酒を広げるといった批判を避けるためともいわれますが、そもそもコンビニではビールだけではなくウィスキーやワインまでアルコールを豊富に取り扱っているお店が多く、店頭でビールを売ることだけを批判するのはあまり説得力がありません。実際、最近はコンビニの近くのパーキングで酒盛りをしているビジネスパーソンをよく見かけます。

SNSで情報が拡散され人気が集中する恐れがあったのが原因という説も、話題性を考えれば決してネガティブな話ではありません。人気商品が品切れになれば、さらにそれが人気の証として宣伝効果につながるというのはよくある話です。

では、延期ではなく中止を決めた理由はどこにあるのでしょうか。それは、お店のオペレーションと収益性にあるのではないかというのが私の推測です。

コンビニの人手不足は深刻で、アルバイトの確保に各店が腐心しているようです。既にレジの対応や仕入れた商品の陳列、店内調理、在庫管理などで疲弊しているスタッフに、さらに生ビールのサーバーの管理や樽の交換などの業務は、販売量を考えると安定対応できないと判断したのではないでしょうか。

生ビールの提供にどの程度、自動化されたマシンが導入されるのかはわかりませんが、生ビールを樽で提供すると樽の交換の度に圧力調整などの手間がかかります。暑くなれば大量のビールの注文が入り、短時間で樽交換が必要になってくる。その業務負荷が他の業務に影響する可能性は高いと思います。

また、ビールの原価が高ければ、利益率も低く収益性よりも集客のための商品という位置づけになります。しかし、集客のために本来のコンビニとしてのサービスレベルが低下してしまっては本末転倒です。長期的には客離れを引き起こしてしまいます。そこで、本部が直前に急遽中止を決定した。

これは私の勝手な憶測ですから、真相はわかりません。しかし、コンビニを利用者視点として見ていると、あまりに業務が多様化しすぎて、オペレーションの限界に来ているように見えます。

顧客ニーズが強い生ビール販売。中止してしまうのではなく、セルフレジの導入など業務の効率化を並行させて進めることで、いつか開始して欲しいと思います。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2018年7月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

 

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。