自民党綱領など:自由闊達な党内論議は行われているか

石破 茂

石破 茂です。

党の基本を定めた自民党綱領(下野時の2010年1月24日に新綱領を制定)に則り、その範囲内において所属党員や所属議員がそれぞれの信じるところを表明し、その実現のために尽力するのは極めて当然のことであり、責務でもあります。

党綱領は野党時代に下野するに至った要因を真摯に反省しながら、国会議員のみならず地方の代表も交えて侃々諤々の議論の末に定められたものであり、このもとに自民党は政権に復帰したはずです。自民党とは何か、を論ずる際には常にこの綱領に立ち返ることが必要です。全文は党のホームページやネット上でご覧いただけますが、大意は以下のようなものです。

1.我が党は常に進歩を目指す保守政党である。勇気をもって自由闊達に真実を語り、協議し、決断する。多様な組織と対話・調整し、国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる。

2.基本的考え方 日本らしい日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法の制定を目指す。日本の主権は自らの努力により護る。自助自立する個人を尊重し、その条件を整えるとともに、共助・公助する仕組みを充実する。政府は全ての人に公正な政策や条件づくりに努める。将来の納税者の汗の結晶の使用選択権を奪わぬよう、財政の効率化と税制改正により財政を再建する。

是非全文を別途ご覧いただきたいのですが、自民党はこの綱領に則って運営され、政策を実現する政党なのであり、これに反することは断固として糾されなくてはなりません。

自民党内において勇気をもって自由闊達な議論が行われているか、多様な組織と対話・調整し、政府を謙虚に機能させているか、日本の主権を自らが護る体制を整えつつあるか、政府は全ての人に公正な政策や条件づくりに努めているか、財政再建への努力はなされているか。総裁選挙においてはこれが議論されなくてはなりません。党綱領は党の憲法ともいうべきものであり、これを蔑ろにすることは党を否定すること以外の何物でもありません。

時折「野党の時に作ったものだから」という理由で野党時代にまとめた政策や方針を否定する意見がありますが、私はこの立場には与しません。我が党は、いったん自民党を下野させた主権者たる国民の審判に常に謙虚でなければならないのであり、これを忘れたとき、再び国民は自民党を見放すでしょう。他に代わる政党が存在しない以上、それは日本国にとってこの上ない不幸であることを肝に銘じなくてはなりません。

岸田氏が総裁選挙への出馬を見送ることを表明されました。様々な論評が報道されていますが、総裁選挙に立候補するか否かという決断は、本当に幾晩も寝られない懊悩が続く苦しいものです。

かつて故・中川一郎代議士が総裁選に出馬、敗退した後に自らその命を絶たれた時、その恐ろしさをまざまざと感じたものでした。事実かどうか確認するすべもありませんが、岸田氏の不出馬会見を受けて「今更遅い」「岸田派は人事で干しあげるべきだ」などという声が主流派幹部から発せられているとの報道があります。これが本当だとすれば、なんと傲慢で不遜なことか。自民党は一部のみの政党ではない。党員すべてのものであり、政権政党である以上国民すべてに奉仕する政党でなければならないと強く思います。

永田町は総裁選モードに移行しつつあり、私の動向も焦点の一つとなっているようです。三年前に引き続いて今回も無投票ということは党員に対する背信であり、決してあってはなりません。

政策も、党の在り方も堂々たる論戦が交わされるべきであり、私もその中の一人たるべく、十分に想を練り、推薦していただける議員をお一人でも多く募る努力をし、しかるべき時期に態度を明らかにしなくてはなりません。

週末は、自民党支部の大会や講演で愛知県・兵庫県・滋賀県へ参ります。
猛暑の中、台風の接近も予想されています。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。


編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2018年7月27日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた石破氏に感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。

石破 茂
新潮社
2018-07-13