アメリカのトランプ大統領は、中国に貿易戦争を仕掛けた。中国からの輸入品に、実に25%もの追加関税を課したのだ。アメリカにとって、中国は最大の輸入国である。
一方の中国は、2015年に産業政策「中国製造2025」を打ち出している。次世代情報技術やロボットなどの重点分野を発展させ、2025年にはアメリカに追いつき、いずれ追い抜くというものだ。
トランプ大統領は、アメリカ第一主義を掲げてきた。そんな彼にすれば、中国が「潰したい国」であるのは当然だろう。
ところが、だ。ここにきてトランプ大統領は、欧州各国にまでケンカを仕掛けてきた。7月11日、ブリュッセルで開催されたNATO首脳会議で、「あなた方は安全保障をすべて米国にやらせている。これはとんでもないことだ。NATO加盟国は、防衛費を従来の目標値である、GDP比2%から4%に引き上げるべきだ」と要求したのだ。
とくにドイツに対しては、「ドイツはロシアから天然ガスを大量に購入している。ドイツはロシアの捕虜のようなものだ」と名指しで批判している。
EUを敵に回したトランプ大統領だが、7月16日、ヘルシンキでロシアのプーチン大統領と会った。通訳以外は同席せず、2人きりで2時間ほど話したという。
クリミア併合以降、ロシアは世界から制裁を受けている。その制裁には、アメリカも当然、加わっている。シリア問題では、アメリカは反アサド政権勢力を支持している。一方、ロシアが支援するのはアサド政権だ。アメリカとロシアは、まさに対立関係にある。
アメリカと敵対し、世界からも孤立しているプーチン大統領と、なぜトランプ大統領はわざわざ会ったのか。
ロシアについては、「ロシアゲート問題」もある。一昨年前のアメリカ大統領選挙で、ロシアが不正に介入した可能性があるという問題だ。アメリカの司法当局は、ロシア情報機関当局者12人を起訴している。
だがプーチン大統領は、「われわれは一切、アメリカの大統領選挙には介入していない」と明言した。すると、なんとトランプ大統領は、アメリカの司法当局を批判、「ロシアゲート疑惑は、二大核保有国であるアメリカとロシアの関係を悪化させるためのもの。いわば魔女狩りだ」と発言したのである。
トランプ大統領は、「アメリカとロシアは安全保障や環境問題で、協調関係を築かねばならない、対話がなければ何も得られない」とも述べている。
今回の会談では、北朝鮮の非核化について、「急ぐ必要もないし、期限を設ける必要もない」とした。もしそうであるならば、6月12日の米朝首脳会談は、いったい何だったのか。単なる政治ショーだったのか。
さすがにこれらの発言には、共和党幹部からも批判の声があがっている。いったいトランプ大統領は、アメリカ国民に何を訴えたいのか。
トランプ大統領の発言と行動があまりにもめちゃくちゃなのだ。にもかかわらず、アメリカでのトランプ大統領の支持率は上がっているのである。
編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2018年7月28日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。