注目される小泉進次郎氏の選択
どうやら石破さんの面目だけは立ちそうな展開になってきているので、少しだけホッとしている。
数の力で何が何でも敵対する者を葬り去ろうとするような威勢を示し始めた人がおられたので、いったい自民党はどうなってしまうのだろうか、と内心心を痛めていた。
私のところには自民党の国会議員や地方議員も相談に来ることがあるから、ちょっとそれは拙いよ、と申し上げることがあっても、自民党自体がおかしなことになったり、極端な迷走を始めることは望んでいない。
いいものはいい、悪いものは悪い、と言っているだけのことで、悪いところは速やかに是正してもらえばいいだけの話である。
安倍政権には腐敗臭はないが、全体として劣化していることは否定できないので、然るべき時に次の適当な人に政権を委ねられた方がいいですよ、と言い続けているに過ぎない、と自分では思っているのだが、安倍三選に反対する人間は敵だ、と見做す方がおられるのも事実だから、そういう方々にとっては私のような存在は目障りかも知れない。
まあ、そういうことを承知の上で、またまた目障りになるかも知れないことを書いておく。
石破さんの総裁選への出馬表明はどうやら8月15日前後になりそうである。
安倍総理の出馬表明もその頃になりそうだ、という観測も出始めている。
終戦記念日に開戦宣言か、などと茶化していい話ではないが、とにかく石破さんの総裁選挙立候補の足場が固まってきたことはご同慶の至りである。
自民党の中では、岸田さんの立候補を断念させるために相当物騒な話が飛んでいた、という噂話がある。
私が聞いた話ではないので「その嘘、ホント?」というところだが、戦いを目前にするとどなたでも相手方に対して相当の敵愾心を燃やしやすいので、如何にもあり得る話ではある。
所属議員が20人しかいない小派閥の石破さんが今回の総裁選挙で所定の推薦人を確保できないような状況に追い込まれてしまったら困るな、と思っていたが、ここに来て援軍が現れたようである。
この先どういう展開になるのか分からないが、まずは石破さんの面目が立ちそうになったことはよかった。
野田さんがこれから先どうされるか分からないが、やはり今、最も注目すべきは小泉進次郎氏の動向だろう。
私は、ご自分のかねての信条どおりに素直に動かれるのがいい、と思っているが、永田町の同調圧力には相当のものがある。
さて、小泉進次郎氏はどう動くか。
「さすが、侠(おとこ)、進次郎!」の掛け声が掛かるような、見事な立ち居振る舞いを期待している。
小泉進次郎氏に期待するのは、現在の自民党の派閥の解体と中選挙区選挙制度の復活
衆議院の小選挙区選挙制度は、大過なく国政を担っている政権政党には都合のいい選挙制度ではあるが、政権政党の内部での切磋琢磨が疎かになり、有為な新人の発掘や登用を阻害するという一面がある。
国政が滞りなく回っているからいいじゃないか、という声もあるだろうが、政権政党の内部での新陳代謝や世代交代が上手く進まなくなる、という弊害があり、悪くすると政権政党の中で自由闊達な議論が行われなくなり、一部の人の独善的な判断で偏頗、かつ不公正な政策が強行されてしまう、ということもあり得る。
間違ったことが行われていても、皆、口を噤んでしまい、いつまでも間違いを指摘する人が現れずそのまま放置されてしまう、などということもあり得る。
自浄機能、自浄作用が働かなくなる可能性がある、ということを関係者の皆さんにはよくよく認識していただきたい。
中選挙区選挙制度は同一政党の候補者同士の激しい選挙になりやすく、金権選挙、金の掛かる選挙になってしまうから小選挙区選挙制度がいい、という話も出てくるだろうが、中選挙区選挙制度時代の政治家と小選挙区選挙制度になってから誕生した政治家と比較してみれば、どう見ても中選挙区選挙制度時代の政治家の方が逞しい。
現職の衆議院議員の方々からすれば、今の小選挙区選挙制度を中選挙区制度に改めるなどということはトンデモナイ、ということになるだろう。
小選挙区選挙制度には問題がありそうだ、と気付きながら、しかし、実際には何も手を付けないでそのままにしてしまう、ということになりやすい。
選挙制度を変えるには、大変な力技が必要になる。
それこそ、政権交代が起きるようなことでもなければ、選挙制度は変えられない。
私が見ている範囲では、そういう大変な力技を発揮出来そうなのは、今のところ小泉進次郎氏一人である。
小泉進次郎氏には、自民党の派閥を解体し、小選挙区選挙制度を中選挙区選挙制度に変えるだけの力を持つ存在にいずれなっていただきたい、と願っている。
いつになるか、まったく分からないが…。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年7月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。