今回は、『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)を紹介したい。著者は精神科医の樺沢紫苑医師。雑誌、新聞などの取材やメディア出演も多い。脳科学に裏付けられた、書き方、伝え方、動き方とはどのようなものか。独自の経験や理論をもとに確立した「アウトプット術」は大変ユニークだった。
人生を変えるのはアウトプットのみ
樺沢医師は、作家として28冊の本を上梓している。毎月20冊以上の読書を30年以上続けている。これはインプットとしてはかなりのボリュームといえるだろう。
「あるとき『いくらインプットをしてもちっとも成功しない』ということに気づきました。それ以来、意識的にアウトプットを強化しています。私が行っているアウトプットの一部です。メルマガ・毎日発行13年、Facebook・毎日更新8年、YouTube・毎日更新5年、毎日3時間以上の執筆11年、年2~3冊の出版10年連続、新作セミナー・毎月2回以上9年連続。その結果、飛躍的な自己成長を日々体感できるようになりました。」(樺沢医師)
「15万部のベストセラー『読んだら忘れない読書術』(サンマーク出版)を筆頭に、累計50万部の本を出しています。アウトプットばかりしていると、『寝る時間はあるのですか?』とよく質問されよすが、睡眠時間は毎日7時間以上を確保しています。」(同)
そればかりではない。樺沢医師は、18時以後は働かない、月10本以上の映画鑑賞、月20冊以上の読書、週4~5回のジム通い、月10回以上の飲み会、年30日以上の海外旅行と、「普通の人の3倍以上は遊んでいると思います」と解説する。
「なぜこんなことができるのかというと、アウトプットの方法を工夫し、インプットとアウトプットのバランスを整え、学びと自己成長のスピードを最大化することに成功したからです。人生は、アウトプットで変わります。仕事や勉強をアウトプット中心に切り替えるだけで、計り知れない能力を発揮することができるのです。」(樺沢医師)
「現実」はアウトプットでしか変わらない
本書ではアウトプットの重要性と、具体的なアウトプット、そしてアウトプットを自己成長につなげる方法が伝えられている。世間では、「インプット」と「アウトプット」という言葉が使われるが、そもそも「インプット」「アウトプット」とはなんなのか?
「インプットとは、脳の中に情報を入れる、つまり『入力』すること。アウトプットとは、脳の中に入ってきた情報を脳の中で処理し、外界に『出力』することです。『読む』『聞く』がインプットで、『話す』『書く』『行動する』がアウトプットです。本を読むのはインプット。その感想を友人に話せばアウトプットになります。」(樺沢医師)
「他にも、本の感想を文章に書くのもアウトプットですし、本の内容をもとに実際に行動してみることもアウトプット。勉強なら、教科書を読むのがインプット。問題集を解く、テストを受けるのがアウトプット。理解した内容を友人に説明する、教えるのもアウトプットです。インプットすると、脳の中の情報や知識が増えます。」(同)
しかし、インプットだけでは、現実的な変化は何ひとつ起きないと、樺沢医師は解説する。一方で、アウトプットは「行動」である。アウトプットして初めて、現実世界に対して変化や影響を与えることが可能になる。
本を100冊読んでも、まったくアウトプットしなければ、現実の世界は何ひとつ変化することはありません。インプットは『脳内世界』が変化するだけ。アウトプットして、初めて『現実世界』を変えることができます。目の前の現実を変えたいなら、どんどん話して、書して、行動しなければいけません。」(樺沢医師)
樺沢医師が独自のアウトプット理論を確立したのは40歳を過ぎてからになる。学びに年齢は関係ない。結果が出る「アウトプット術」。この機会にお試しいただきたい。
尾藤克之
コラムニスト