コンサートチケットの販売仲介サイトを閉め出そうという動きが、昨今顕著になっている。
高値で転売することを禁止する目的で、いわゆる「ダフ屋行為」を閉め出す狙いだ。
「ダフ屋行為」は、(法律では禁止されていないが)各地の条例で禁止されていることが多い。
「ダフ屋行為」の禁止が始まった経緯は、戦後の食糧難の時代、食管法に基づく食券(?)を転売することを禁じたことだった。苦し紛れに食券を手放して餓死する人たちが出てくることを危惧して、転売禁止措置が設けられたのだ。
食品ロスが問題視されている現代とは時代が違いすぎる。
コンサートチケットの悪質な転売を防止するのであれば、大量購入を規制すれば済むことだと私は考えている。
一人当たりの販売数を(例えば)2枚にすれば、時間と労力をかけて2枚のチケットを手に入れた人物が、チケットを手に入れる暇はないけど定価の5倍のお金を出しても入手したい人物に5倍以下の価格で売るのは、正当な取引行為だ。
本業を1時間やれば5万円稼ぐことができる人が、時給1500円の人から(3時間の手間をかけて入手したチケットを)2枚3万円で譲ってもらえれば、売り手も買い手も双方ハッピーになれる。
これは、紛れもなく正常な市場取引だ。
特定の業者がチケットを大量に買い占めて、価格をつり上げて市場原理を歪めてしまうことだけを禁止すればいい。
ちなみに、中国ではコンサートチケットが高額だそうだ。
CDが売れず、コンサート会場のグッズの販売収入がないことから、アーティストの収入源がチケット代だけだからだと言われている。
最近、中国のチケットプラットフォーム「摩天輪票務」が6000万ドルの資金調達をしたという記事が出ていた。
このプラットフォームは、原則として余ったチケットを割引販売するもので、割高販売をする日本のサイトとは正反対だ。
記事を見ればわかるように、同プラットフォームのシステムはハイテク技術ふんだんに用いている。
チケットを買った人間と入場者が、同一人物かを顔面認証しようとしている日本のシステムが陳腐に思えるのは私だけだろうか…。
そもそも、コンサートチケットを定価販売する意味があるのだろうか?
様々な商品やサービスの定価販売が独禁法で禁止されている昨今、いろいろと考えさせられる。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年8月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。