こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
森喜朗・五輪組織委会長が正式にぶち上げた「サマータイム」。以前から組織委員会の中で議論があったことは知っていたものの、まさかこのタイミングで突如出して来るとは思いもよりませんでした…。
すぐさま菅官房長官が記者会見で慎重意見を述べるなど、当初はすぐに議論は収束するのではないかとタカをくくっておりましたが、
・安倍首相が自民党内に検討を指示
・重要閣僚(麻生財務省)が肯定的な姿勢を表明
・大手メディアの世論調査で賛成多数
という状況になっており、強い危機感を覚えているところです。
この間、私も有識者の意見や導入事例について調べてみましたが、日本において導入するメリットはほとんどゼロ。
サマータイム実施は不可能である
https://www.slideshare.net/tetsutalow/ss-109290879
上記は今回のサマータイム議論初期にスライドシェアでバズったもので、ITに関連する論点がよくまとめられています。
変更によるITコストは莫大で、とても現実的ではないという他にも
・省エネ効果としても疑問があり、EUでも見直し議論が進んでいる
・睡眠に大きな影響を与え、健康被害が懸念される
・緯度が低く、高温多湿な日本に導入する意味はそもそもない
等など…。
そしてサービス残業が残念ながら常態化している日本では、始業時間を早めたところで早く帰れる人が増えるとも思えません。
さらに花火大会や盆踊りなどの夏祭りは、日没後でないと開催できないものも多数。退勤後にテニスやプールといった習慣のない日本では、飲み会がコミュニケーションの中心です。
こうした地域の伝統行事や経済効果を捨てることを考えると、地域振興・消費喚起の施策としても愚策だと言わざるを得ないと思います。
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こうした反対論が根強いにもかかわらず、五輪組織委や一部政治家が熱心にサマータイム導入を進める理由はどこにあるのでしょうか?
もちろん省エネ効果などを本気で信じている人もいるとは思いますが、主な理由は「何かをやった実績が欲しい」という点に尽きるでしょう。
「言い訳づくり」と言ってしまっても良いかもしれません。
今年の猛烈な酷暑を迎えて、「暑さ対策」を強く世論から迫られている。このまま無為無策で五輪に突入してしまえば、批判を免れることはできない。「何か大きな施策をやったのだ」という、目に見える実績を残さねば…!
こうした外圧が政治家たちに働き、関係する役人たちが忖度して計画を進めている背景が容易に想像できます。
実際のところ、現時点における大手メディアの世論調査ではサマータイム導入に肯定的な意見が多く、この目論見が一定程度成功しているのが恐ろしいところです。
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こうした議論が進む中、開催としである東京都は一体なにをしているのでしょうか。
サマータイム「国の検討見守る」 五輪暑さ対策で小池知事
https://this.kiji.is/398021302125970529
結論から言うと、何もしていません。
「国の検討を見守る」という玉虫色な姿勢に終始しています。主催都市として、本当にこれで良いのでしょうか。
東京五輪のためにサマータイムが全国に導入されて混乱を引き起こすことになれば、それこそ東京都が「悪玉」にされ、税制などでさらに悪い立場に追い込まれてしまうかもしれません。
何より都民は、不透明な五輪組織委が主導で予算が膨れ上がりながら進む五輪施策に疑問を覚え、そこに大胆に切り込むことを小池知事に期待していたはずです。
受動喫煙防止対策などでは国の法案を待たずに独自施策を進めているのに、このサマータイムについては「国の検討を見守る」というではご都合主義ではないでしょうか。
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小池知事も、そして東京都議会も、今こそきっぱり開催都市として「サマータイムにNo!」の声を上げるべきです。
私自身としては、この議論が9月定例会まで引きずられているようであれば、都議会としてサマータイム導入反対の意見書・決議を政府に提出することも提案したいと考えています。
まだまだ実態が知られていないサマータイム。上記の指摘のように、「世論」もクラスタによって乖離していることが気になります…。
安易な導入が決定される前に、ぜひ多くの方に実態を知っていただければ幸いです。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は東京都議会議員、音喜多駿氏(北区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年8月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。