こんにちは、肥後庵の黒坂です。
私は個人ブログをはじめ、アゴラ言論プラットフォームなど様々な媒体に記事を投稿しています。日々多くの記事を書いているのですが、これまではずっとキーボード入力をして原稿を書いていました。
しかし、最近はスマホを使った音声入力をしています。音声入力に初めて挑戦する前は「音声入力といっても、キーボード入力にはまだまだ及ばないだろう。変換ミスも多く、修正する手間の多い非効率な入力方法では?」と考えていました。
でも音声入力をするようになって感じたこと、それは「音声入力は多くの人が考えているより遥かに正しく音声を認識出来る」ということ、それから「音声入力をするメリットは速く入力できることではない」ということです。
記事を仕上げるのにかかる時間はあまり変わらない
「音声入力の最大のメリットは入力が速いことである」、と思っていないでしょうか?確かに入力速度の速さは、キーボードとは比較になりません。特にタッチタイピングができない人にとっては、音声入力の速度はまさに圧倒的です。
しかし実際に原稿をゼロから書き始め、他の人が読むに耐えるクオリティになるまでにかかる所要時間としてはキーボード入力とそれほど大きな違いがありません。なぜかと言うと、特に慣れていない頃は音声入力後、後からかなりの部分を手直しする必要があるからです。
音声入力のAIは非常にスグレモノで、誤字脱字はそれほど多くはありません。しかし、改行や句読点、表現などは編集が必須であり、音声入力だけで完璧な形に仕上げることはできません。音声入力後の手直しや体裁を整える編集はかなり行わなければいけませんから、仕上がりに要する時間は結局キーボードとそこまで大きな差はないと考えています。これは実際に音声入力をするようになってみてわかったことです。
効率的な音声入力をするには訓練が必要
音声入力に慣れていない人は、自分の思考をキーボードやスマホのフリック入力を通じてテキスト出力することに最適化されています。キーボード入力の場合、どれだけ入力速度が速い人でも、脳内の思考速度がキーボード入力を下回ることは決してありません。
ですのでキーボードを入力しながらどんどん「これを書こう」「あれを書こう」と思考が入力より先行しているため、書くテーマがあらかじめしっかりと決まっているのであればキーボード入力をしながら、ある程度高い品質の文章でどんどん書き進めることができます。
「思考速度>>>キーボード入力速度」ですから、キーボード入力を“しながら”思考を整理して、他の人が読むのに耐えうる文章を作成することが出来るわけです。
それに対して音声入力については、思考速度と音声入力速度がかなり近くなりますから、音声入力に慣れないと入力した原稿に「えー」とか「あー」といった無駄なテキストが入力されてしまいます。経験を積んで文章をキーボードで書くことに慣れていったように、音声入力もマイクに向かって「後で編集の手間が出来るだけ必要のないように上手に話す」という入力経験を重ねる必要になります。
それを意識せずに音声入力に手を出してしまうと、「結局後で手直しが大変だから音声入力はかえって非効率だ」という誤った結論に辿り着いてしまいかねません。
音声入力の最大のメリットとは?
私が実践して感じた音声入力における最大のメリット、それは「入力速度」でも、「移動中でも入力ができてしまう」でもありません。それは何かと言うと、「音声入力をするとプレゼン力が高まる」ということです。
音声入力を前提とした話し方に慣れていくと、プレゼン力を飛躍的に高めることができます。傍から見ると話しかけている対象はスマホですが、実際には音声認識をするAI(人工知能)であり、そのアウトプットを見るのは読者というオーディエンスですから、あたかも原稿に向かってプレゼンをし、それをAIが読者というオーディエンスにつなげてくれているようなものです。
ですので、音声入力とは実質的には物理的に聴衆がいないプレゼンテーションと同じなのです。音声入力の経験を積むことで自室で、たった一人でプレゼンテーションが上手になってしまうのです。
私は音声入力を始めた頃、「修正箇所が多すぎる。こんなに修正をするのならキーボード入力をした方が速いな」と感じた瞬間もありました。しかしながら入力の訓練を重ねるにつれ、修正箇所を抑えるような論理的な話し方が身につくのをしっかりと実感できました。そのような話し方の経験を積むことで、一度聞いたら話がしっかりと理解でき、論理的でわかりやすい話し方になります。その結果、人が聞いてわかりやすいプレゼンの実践訓練になるわけです。
音声認識AIというオーディエンスを獲得したことにより、たった一人自室にいながらプレゼンの練習が出来る時代になったことはすごいことです。
時代の流れとともに、文章作成の世界にも「音声入力」という効率的なテクノロジーが登場しました。新たな文章作成ツールを活用するプロセスの中で、「思考が整理され、プレゼンテーションの練習にもなってしまう」という思わぬ副産物が生まれたことを、音声入力を続ける中で見つけた気がしました。
黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表
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