中央省庁が障害者の雇用者数に対象外の職員を含めてカウントしていた問題は、地方公共団体などにも広がっており、底なし沼の様相を呈している。厚生労働省の調査によれば、不適切な算入は国の33ある行政機関のうちの27機関で行われており、合計3,460人にも達するという驚きの結果となった。
今年4月に法定雇用率が引上げられたばかり
障害を持った方の雇用については「障害者の雇用の促進等に関する法律」によって、国や地方公共団体のみならず、民間企業にも法定雇用率が適用されており、今年の4月から2.2%(民間企業の場合:従前は2.0%)に引き上げられた。これにより3月までは従業員50人以上の規模の企業で1人を雇用するものとされていたところ、45.5人以上の規模の企業へと拡大した。
同法の第三条には「障害者である労働者は、経済社会を構成する労働者の一員として、職業生活においてその能力を発揮する機会を与えられるものとする」と基本的理念が謳われている。先天的あるいは後天的な障害に関わらず、その人が出来ることを出来る分だけ労働して社会に参加するというのは、昨今、各省庁が競うように唱えている「生産性向上」にも繋がるのではないかと考えていたのだが、まさかその旗振り役となるべき中央省庁がこの体たらくだったとは、本当に憤懣やるかたない。
しかも、何かにつけて重箱の隅をつつくように些事の指摘をしてくるほど、法律要件には敏感で優秀な公務員が、揃って厚生労働省からの「障害者手帳によって確認」という指針を無視したり、「身体障害者とは『原則として』手帳の等級が1~6級」に該当する者」という通達を拡大解釈して自分達の都合の良いように運用していたというのは、にわかに信じられないくらいの衝撃だ。
法定されている雇用率を達成できない民間企業には、その企業名を公表されたり、雇用人数の不足1人につき原則5万円の納付金が課せられるなどのペナルティがある。実際、弊社のクライアントのなかでも、求人をかけたものの、なかなか条件に合致した応募がなく、採用するまで納付金を収めた企業がある。
多くの民間企業は創意工夫で法令遵守
障害を持った労働者と企業側のニーズとのマッチングは重要だ。障害の程度や内容はそれぞれ千差万別であり、製造業などで業種によっては、なかなか仕事をまかせ難い状況にあるのは事実としてある。しかしそれでも多くの民間企業は法令を遵守すべく、創意工夫を重ねて、作業分担を見直したりしながら状況に対応すべく努力している。我々も微力ながらクライアントのニーズに応えるべく、障害を持った方にどう働いてもらうのが良いか一緒になって考えているのだ。
そういう努力を横目に、安直かつ不遜とも思える勝手な解釈で、長年にわたり「水増し」してきたという事実は、弁解の余地のない「不正」そのものだ!一部の省庁関係者からは反論も出ているようだが、いったい何の抗弁しようというのだろうか?
まだこれから地方公共団体などの調査が進めば更に暗闇が広がる予感しかないが、是非、これを契機に膿を出し切って、これぞ「率先垂範」という姿を見せて欲しいと切に願うばかりだ。