人は、文章を覚えてはくれない。覚えるのは気になるキーワードである。その証拠にテレビCMの長さは通常15秒である。だから、ひとつのメッセージは15秒以内に伝える。最初から、伝えたいキーワードを決めて話す。これを知っているかどうかで、仕事のパフォーマンスが大きく変わってくる。伝えたいことは15秒で十分伝わる!
今回は、『相手のキャラを見きわめて15秒で伝える!最小の手間で、最高の結果を出す方法』(ダイヤモンド社)を紹介したい。著者は、羽田徹(はだ・とおる)さん。FM愛知や文化放送でラジオオDJとして10年間活動した話し方の専門家になる。主要著書として『ビジネスマンのためのスピーチ上手になれる本』(同文舘出版)がある。
ここは都内の某スタジオ。ある新人は最近デビューした売れっ子だ。しかし、相手が大御所だとペコペコするが、若いADに横柄な態度をとるので評判が悪い。「あいつ、調子に乗っているな!」「勘違いしてるんじゃねえの?」。こんな声がスタッフの間から聞こえだすと、局内で一気に悪いうわさが広がってしまう。
「スタッフも、もちろん人聞です。その結果、ラジオDJやスタッフなどが流す曲を決める際の選曲表から新人の曲は削られていきました。半年後に人気は陰り、いつの土にか名前を聞かなくなってしまいます。我々スタッフだけは、なぜ売れなくなったか知っているのです。一方、10年以上売れ続けている歌手もいます。一般的には売れている歌手は横柄な態度だと思われがちですが、私が見てきた人は違います。」(羽田さん)
「長年活躍しているほとんどのアーチストは、フアンになってスタッフも応援したくなるのです。『DREAMS COME TRUE』のLIVE後の楽屋でのできごとです。私を含めたラジオ局のスタッフはLIVE後に挨拶のためお2人を待っていました。LIVE終了後、楽屋に入って来るなり、来てくれた人たちそれぞれに、挨拶を始めました。」(同)
当時新人DJだった羽田さんのところにも、歩み寄って「今日はお忙しい中ありがとうございました」とと目を見て握手をしてくれたそうだ。それが、たった15秒。それだけで、もう、すべてのスタッフの目はハートで心を鷲づかみにされていた。
「松任谷由実さんも気遣いの人です。初めてのインタビューで私が緊張して『松任谷さん、本日はよろしくお願いします』と言うと、『その呼び方やめてよ!ユーミンって呼んで。堅苦しくなっちやうから』と笑顔で返してくれました。その一言で緊張がほぐれ、非常になごやかで楽しいインタビューになりました。緊張した私を見て気遣った、ユーミンならではの場創りに一気に惹きつけられてしまいました。」(羽田さん)
話し方の専門家が教える、究極の伝え方とはどのようなものか。相手のタイプ別の伝え方、相手のやる気を上げる伝え方など、ビジネスシーンで使えるテクニックを知りたい方には役立つだろう。若手のビジネスパーソンにおすすめしたい。
尾藤克之
コラムニスト