本来は深夜には原発が「ベースロード」として電力を供給するので、泊原発(207万キロワット)が稼働していれば、大停電は起こらなかったと思われるが、これは原子力規制委員会が安全審査をしており、いつ再稼動できるか分からない。安倍政権は原発の問題からずっと逃げているからだ。
5年以上も放置されてきた原子力問題
安倍首相が原子力問題について判断したのは、2013年10月のオリンピック招致演説が最後だ。このとき「汚染水」の処理について、首相は「国が前面に出る」と言い「状況は完全にコントロールされている」と宣言した。
このとき国費でALPS(多核種除去設備)や凍土壁が導入され、排水から放射性物質を除去する方針が決まったが、トリチウム(三重水素)が除去できないことは分かっていた。これは水素の放射性同位体で、原子核の構造が水素とよく似ているので、除去する実用的な技術がないのだ。
今も福島第一原発では、水をタンクに貯蔵するために毎日5000人が作業しており、1000基近いタンクに92万トンの「トリチウム水」が貯蔵されている。その処理をめぐって、8月30日と31日に地元で公聴会が開かれた。出席した反対派は貯蔵された水の海洋放出に反対し、「トリチウム以外の放射性物質がタンクに残っている」と主張した。
そんなことは当たり前だ。事故を起こした炉心を冷却しているのだから、その排水にはいろいろな放射性物質が含まれている。それは環境基準以下に薄めて流せばよかったのだが、東電が「ゼロリスク」にしようとしたことが問題をこじらせてしまった。