まさにクレイジー・リッチと呼ぶにふさわしい。
NY市と言えば、富裕層が最も住む街として知られていました。ところが、あの映画を地で行く展開として、この都市がNYを抜き去り、トップの座を奪取しています。
そう、香港です。
パイオニアの救世主として、数百億円規模の融資を決定したとされる投資ファンド”ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア”の本拠地が、まさに香港ですよね。調査会社ウェルスXによれば、アジア人の富裕層の資産(*ここでは、3,000万ドル=33億円以上)は2017年に18.5%増の8兆3,650億ドルへ増加したといいます。なかでも香港には富が集中し、富裕層の数は前年比31.0%増の1万10人にのぼりました。都市別のランキングは、以下の通り。
(作成:My Big Apple NY)
地域別では北米が首位で前年比9.5%増の9万440人、資産は13.1%増の10.99兆ドルですから世界全体の35%を占めます。次いで欧州が12.9%増の7万2570人、資産は13.5%増の8.773兆ドル。気になるアジアは18.9%増の6万8,970人、資産は26.7%増の8.365兆ドルと2位の欧州と4,080億ドルとそれほど差はつけられていません。ウェルスXは、向こう5年以内に欧州を追撃し、2位に躍り出ると予想しています。嗚呼、クレイジー・リッチ!!
日本勢としてはトップ10に東京が堂々3位、大阪が10位に位置し、5年後は維持できているのかも気になりますが、やはり目下の注目はアジア経済の行方。トルコやアルゼンチン、エマージング諸国のように経常赤字や外貨準備高などで赤に近い黄信号が灯っているわけではありません。しかしトランプ政権による追加関税措置もあって、中国に再び景気減速の暗雲が立ち込めるなか、東アジアの繁栄が現時点のシナリオ通りに進むかは、未知数です。
世界における富裕層の人口に視点を向けると、2017年に前年比12.9%増の25万5,810人と2桁増を記録しています。2016年の3.5%増から4倍近くも増加しました。世界の超富裕層全体の資産は、16.3%増の31.5兆ドル也。世界のGDPが3.7%増と2011年以来の高水準だった上、株式相場や住宅価格など資産価格の高騰も富裕層の資産を押し上げたことでしょう。
ちなみに、2017年「世界の同調的な成長」を受けたリスク選好度の上昇を表すように、ラザードによれば株式相場は空高く舞い上がりました。
・MSCIエマージング・マーケッツ指数 37.3%
・ラッセル1000グロース指数 30.2%高
・MSCI EAEF指数(欧州、豪州、極東) 25.0%高
・MSCI ACWI指数(MSCIワールド指数とエマージング・マーケッツ指数を足したもの) 24.0%高
・ラッセル2000グロース指数 22.2%高
・S&P500 21.8%高
エマージング株式指数など米国以外の株式相場などの急伸の裏側に、ドル安が挙げられます。ドル指数は9.7%下落し、2011年以来の落ち込みを示しました。翻って今年はドル高を迎え、米株以外の主要な株式相場はMSCIエマージング・マーケッツ指数やMSCI ACWI指数などそろってマイナスの状態(9月11日時点)。米国の成長加速とFedの利上げもあって、リーマン・ショックから10年目の今年は景気拡大期の分岐点となるかもしれません。
(カバー写真:Gordon/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年9月11日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。