防衛省概算要求の小火器関連についてです。
89式小銃は来年度の調達がなく(空海自ではある可能性がありますが)、これで調達は終わりのようです。それであれば30年もかかったことになります。
本来、何丁をいつまでに調達するのか、総額がいくらかのか、納税者にも、その代表である政治家にも提示されておりません。
このような胡乱な調達は文民統制上問題があるだけでなく、極めて不透明な調達となり、また諸外国の8~10倍というふざけた価格での調達がまかり通ることになります。
そしてはじめの頃の89式は既に用途廃止になるのではないでしょうか。要求された数の銃が揃うことなく、しかも諸外国では近代やや更新が進み、レールマウントなどが標準化されているに30年ほとんどそれらしい改良がなかった。さらにアンダーバレル方式のグレネードランチャーを採用することもなく、21世紀になって既に戦後廃った、ライフルグレネードをを高値で調達。
陸幕の装備の知識や当事者能力はそこいらのガンオタ以下ということです。
対人狙撃銃は本年度同様に6丁で0.4億円、1丁あたり666.67万円です。既に米軍はやめたM24にこんなバカ高い金を払っているわけです。これを見れば、輸入に切り替わってもバカ高く買うことをやめないのではないでしょうか。陸幕は組織的に中国あたりから金をもらって、自衛隊の弱体化を図っているんじゃないと疑いたくなります。
もっと、優しく指摘すれば自衛隊も批判を受け入れやすいとよく言われますが、こういう人たちはやんわりいうと、理解できないでしょう。鈍いし、想像力がないから。率直に申し上げて集団で精神科の検診を受けるべきだと思いますよ。
60ミリ迫撃砲も本年度同様6門で、0.2億円。1門あたり333.34万円です。これまたまとめ買いをすればずいぶんとお安くなるはずです。この数は、そこいらのテロ集団やら山賊以下の調達数で、武器商人と交渉すれば鼻で笑われるレベルです。
しかもコマンド迫撃砲用の軽量砲弾の導入もまだ。英陸軍が60迫を廃止しますが、それは各人が分担して運ぶ砲弾の重さが一因です。下車歩兵が運べる数は限定されています。ですから英陸軍ではATVを60迫撃砲のために導入したんですが、ATVもない陸自ではどうするんでしょうかね?
更に申せば、携行砲弾を減らすのであれば、照準を精密化する手もあります。ネットワーク型の測距及び照準システムは既にあちこちで開発されていますが、それも導入がない。
60迫は特殊作戦群、水陸両用団だけではなく、機動戦闘団に配備されるMCV(機動戦闘車)に搭載されることになっております。MCVに搭載してなにするんですかね。むしろMCVにはセンサーマストやRWSを搭載すべきだと思いますがね。
そして載っていないことが重要な情報が一つ。陸自では機関銃がまったく要求されていません。空海自が要求している可能性もありますが、せいぜいM2が数丁程度でしょう。
以下は過去に何度か紹介した過去10年間の3自衛隊の機銃調達実績です。
既にご案内のようにコマツが特機部門から撤退するようです。おそらく住友重機が近い将来機銃から撤退する可能性は極めて高いでしょう。
ですが、先述のように輸入に切り替えてもわざわざ高く調達すれば、そのメリットは享受できません。少数を割高に調達するコスト感覚の欠如を早く是正すべきです。
■本日の市ヶ谷の噂■
来年度概算で要求の新型装甲車試験車両(20億円)は装備庁がMHIIのMAV、陸幕が輸入車でストライカー、ボクサー、ピラーニャが名乗りを上げているとの噂。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年9月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。