この9月27日にワニブックスさんから単行本を出させていただくことになりました。
この春、アゴラ編集長の新田哲史さんにワニブックス編集長の岩尾雅彦さんをご紹介いただき、執筆の運びとなりました。
本書は、2018年春に日本を騒がせた「財務省セクハラ騒動」を取り上げ、ドタバタのパターンを分析するとともに、そこに隠されたインチキを明らかにしようとするものです。
本書の冒頭でも宣言しましたが、【セクシュアル・ハラスメント sexual harassment】は悪いことです。【義務論 deontology】で考えても【帰結主義 consequentialism】で考えても、この命題には疑いの余地はありません。よって、セクハラ行為に対して厳正に処罰を行うことは当然のことです。ただし、だからと言って、セクハラ認定の適正な【デュー・プロセス due process】を通すことなく特定の人物のセクハラ行為を確定して裁きを与えることは、法治国家において許されることではありません。
この騒動は、表面上は「セクハラ騒動」ですが、実際には「セクハラ」という「無敵の攻撃カード」を手にした野党とマスメディアの【パワー・ハラスメント(和製英語) power harassment】および【モラル・ハラスメント moral harassment】を含んでいます。しかも同時に野党とマスメディアは、自分達も行っていた「セクハラ」行為を一切無視するという【ダブル・スタンダード double standard】を犯していたわけです。
本書においては、財務省・マスメディア(特にテレビ朝日)・野党の公式見解・発言・報道などを時系列に沿って紹介しながら、逐次論評していきます。ここでは、そんな中から、パワハラとモラハラのエピソードの例を少しだけ紹介したいと思います。
■パワハラ
「パワハラ」とは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり、または職場環境を悪化させたりする行為を指す和製英語です。本書における例として、野党合同ヒアリングで怒鳴り散らす立憲民主党・杉尾秀哉議員の次の映像をご覧下さい。
杉尾議員の行為は、国政調査権を持っているという職務上の地位による優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、財務官僚に精神的苦痛を与えると同時に、職場環境を著しく悪化させる明確なパワハラ行為です。メディア関係者の噂(後でデマと判明)を財務省が把握していないことに腹を立て財務官僚を理不尽に罵り、最後にはいまどき珍しい暴言も吐いてます。しかも被害女性記者に寄り添っているように見せかけているもの、実際には被害女性記者の特定につながる個人情報を語っていて、セクハラの【二次加害 second harassment】の【加害者 harasser】になっています。ちなみに、この後に被害女性記者を特定する決定的な情報をネットに流してしまったのは、あの[女性記者]とあの[議員]です。
■モラハラ
「モラハラ」とは、ある人物に対して常に否定的な評価をする、絶えず批判する、孤立させる、その人についての虚偽の情報を流布したり、中傷したりすることを、複数の人物が示しあわせて行う行為(国際労働機関=ILO)です。本書における例として、次の映像をご覧下さい。
テレビ朝日は「セクハラ罪という罪はない」ことを完全に認識していながら、麻生大臣が「セクハラ罪という罪はない」と発言すると、その発言の当事者も含めて執拗に大臣の批判を始めました。恐ろしいダブルスタンダードです。『報道ステーション』を含むテレビ朝日の複数の番組は、麻生大臣の発言に瑕疵がないことを明らかに認識しながら、麻生大臣の発言に対して常に否定的な評価を行い、絶えず批判し、孤立させ、中傷したのです。これは明らかなモラハラ行為です。
野党合同ヒアリングの場において、権限のない官僚相手を前に黒服を着てプラカードを振りかざした行為も極めて異常だったと言えます。これは、個人のセクハラ疑惑を根拠にして、その所属集団に連帯責任を負わせるモラハラに他なりません。
ちなみに、映像をよく見ると、一人だけプラカードを財務官僚に向けずにさりげなくカメラに向けてる議員がいますね(笑)
これらのパワハラ・モラハラは、「セクハラ」という「無敵の攻撃カード」を振りかざして、有無を言わさずスケープゴートを人格攻撃で叩きのめしたものです。このメソドロジーは、今回のセクハラ騒動に限らず、野党とマスメディアの常套手段です。すなわち、不祥事という一定期間有効な「無敵の追及カード」を手にした野党とマスメディアは、追及に不都合なすべての反論をタブー化し、反論の論者を徹底的に「悪魔化」します。本書の本当のテーマはこの構造を明らかにすることに他なりません。
なお、本書ではセクハラに関する国内外の定義や#MeToo運動やTime’sUp運動などの世界的な動きについても必要最小限に紹介しています。野党議員は、財務省や安倍政権は国際的なセクハラの動きがわかっていないと言いますが、実は何にもわかっていないのは野党議員に他なりません。
#MeToo運動は自分も被害者であることを明かしてセクハラ加害者を告発する運動であり、黒い服を着てセクハラを許さないというのはTime’sUp運動です。黒い服を着て#MeToo運動をやっているのは、世界広しと言えども日本の野党議員と韓国だけです(笑)。このような運動の本質についての無理解と運動の政治利用は、運動に対する冒涜に他なりません。
以上、ネタバレにならないよう、この辺にさせていただきますが、騒動の始まりから終わりまで、いつもの調子で平易に論評し続けています(笑)。皆様にお読みいただければ幸いです。
なお、念のため、amazonの書籍紹介ページへのリンクはこちらです。
もちろんamazonは、朝日新聞と違ってメタタグを貼らないとは思いますけど(笑)
編集部より:この記事は「マスメディア報道のメソドロジー」2018年9月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はマスメディア報道のメソドロジーをご覧ください。