三段論法の説明と“法的三段論法”

Himalayaの音声配信で、「三段論法」を説明したが、音声のみでは理解が困難のようだった。

そこで、本稿で簡単に説明することにする。

「三段論法」は、「大前提」「小前提」「結論」で構成される。
「動物は必ず死ぬ」というのが大前提で、「人間は動物だ」が小前提、「ゆえに、人間は必ず死ぬ」というのが結論になる。

「大前提」で重要なことは、ここで間違ってはいけないということだ。
「白鳥は白色の鳥だ」という大前提を立ててしまうと、ブラックスワン(黒い白鳥)は白鳥でなくなってしまう。

「小前提」で重要なことは、「人間は動物だ」という表現が「人間イコール動物」ではなく、「人間は動物に完全に含まれる」と解釈するということだ。

大きな「動物」という円の中に、小さな「人間」という円がすっぽり入っている図をイメージすればいい。
「動物」という円の中で「人間」以外の部分に入るのは、「犬」とか「猫」であることは簡単に理解できる。

このように、「人間」は「動物」という大きな円の中に完全に入っているので、「動物」という円の外側に存在するものが「人間」ではない。

「動物」の外にあるものを「植物」だとすれば、「植物」と「人間」との間には「動物」という円のバリアがあるので、破ることはできない。

よって、「植物」は「人間」ではあり得ない。

同様に、「石」「水」なども「動物」という円の外にあるものなので、「人間」ではあり得ない。
つまり、「動物でないもの(植物、石、水など)」は決して「人間」ではないということになる。
これが「対偶」という概念だ。
「人間は動物だ」の対偶は「動物でないものは、人間ではない」ということになる。

余談ながら、巷で言われている「法的三段論法」は、本来の「三段論法」とは全く異なるものだ。
事例問題を解く際に用いられることが多い解答形式だ。

「本問では、未成年者XがAとの契約を取り消すことができるかが問題となる」
というのが「問題提起」だ。
「思うに、未成年者の法律行為を取り消すことができるとして法の趣旨は、判断能力未熟な未成年者の保護を目的としたものであり…」というのが「抽象的規範の定立」だ。
「よって、XはAとの取引を取り消すことができる」とするのが、「当てはめ」だ。

書く分量が多いときに私が考えた短縮パターンは次の通りだ。
「本問では、未成年者XがAとの取引を取り柄消すことができるかが問題となるが、私は取り消すことができると解する。なぜなら、…」
小さな論点は短縮パターンで書いていった方が省エネになるし、何と言っても採点者にとっても読みやすい。

荘司雅彦
講談社
2014-02-14

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年9月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。