ベネズエラのチャベス前大統領は国内資源の保護と自国の産業発展の為だとして、それまで石油と天然ガスの開発に参加していた外国企業を次々に国有化して行った。そのツケが今ベネズエラの財政を苦しめる結果となっている。
米国はあらゆる手段を使ってベネズエラのマドゥロ政権を資金的に倒壊させようとしている。以下の出来事もそのひとつである。米国の大手石油会社コノコフィリップス(ConocoPhillips)も他社同様にベネズエラのオリノコ川地域での超重質油の採掘に参加していた。
ところが、チャベスはラファエル・カルデラ政権時(1994-1999)から存在していた石油と天然ガスの開発の為の法律を2007年に勝手に変えて、コノコフィリップスに対しこの新しい開発条件に従って開発を続けるか否か迫ったのである。その条件を受け入れないのであれば、撤退してもらうと要求したのであった。コノコフィリップスはその新しい条件は受け入れられないとして投資した資産も回収できず撤退。当時、エクソンモービルも同様に撤退した。その一方で、シェブロン、ブリチッシュ・ペトロリアム、スタトイルそしてトタルはチャベスが決めた新しい開発条件を受け入れて開発を継続。
コノコフィリップスは投資した資金と損害賠償を求めて投資紛争解決国際センター(ICSID)に訴えた。そこでの解決が難しと見るや、パリに本部のある国際商工会議所(ICC)>を介して配下の専門機関<国際仲裁裁判所(ICC)>に仲裁を要請。
因みに、エクソンモービルの場合は2012年にベネズエラ国営石油会社(Pdvsa)が凡そ2億5000万ドル(275億円)を支払ったことで解決している。
しかし、コノコフィリップスの場合は投資額がそれを遥かに上回るものであった。そして、その裁定が今年4月に下り、Pdvsaに対しコノコフィリップスに<20億4000万ドル(2240億円)の支払いの判決がくだされたのであった。当初、コノコフィリップスは<200億ドル(2兆2000億円)の支払い要求をしていたという。
この判決でPdvsaの資産をコノコフィリップスが差し押さえる許可が下りたのに順じて、先ずカリブ海のオランダ領ボネール島とシント・ユースタティウス島のPvdsaが所有する貯蔵ターミナルを押収した。前者には1000万バレルの貯蔵が可能で、後者にも同様の貯蔵ターミナルがある。更に、この押収でキュラソー島の日量最大33万5000バレル分を処理できる精油所の機能にも支障が出るようになるという。
更に、タンカー船までコノコフィリップスに押収されることを恐れたPdvsaはカリブ海の領海区域から離れるようにさせていたという。また原油を積んで寄港した先で押収される可能性はある。カリブ海で押収出来る資産価値は6億3600万ドル(700億円)までにしかならず、要求している賠償金額には及ばない。
コノコフィリップスによる差し押さえの影響でPdvsaの輸出量の25%に支障が出ることをベネズエラ政府は懸念していたという。今も採油は減産に続く減産で、輸出量は大幅に後退している。米国向けでは隣国コロンビアに輸出量で追い越されたほどである。しかも、国際的にも裁判で敗訴も続いている。深刻な財政難にあるベネズエラ政府にとって原油の輸出が減少すればさらに厳しい状況下に置かれることになる。
この様な状況下でその後も双方で交渉が続けられていた。特に、ベネズエラ政府にとっては早期の解決が必要であった。そして遂に、8月20日に双方で合意に達したことが明らかにされた。それによると、合意の署名から90日の間にPdvsa はコノコフィリップスに5億ドル(550億円)を支払う>。そして<残金は4年半の期間を設けて3か月毎に分割払い>を行うというものである。コノコフィリップスもこの支払条件を受け入れて、国際仲裁裁判所を通しての訴えを退けることで了解したという。