「自分の妻は不倫をしない」という根拠のない思い込み

荘司 雅彦

「うちの妻に限って!」
この言葉を、かつて私は何度となく聞かされた。

多くは、妻から離婚請求をされた夫からだ。
ある日突然妻がいなくなり、「離婚したいので後刻連絡します」という書き置きが残っている。
やがて、妻の弁護士から連絡が入ったり、離婚調停が申し立てられる。
夫たちにとっては青天の霹靂のようだが、妻の側としては事前に周到に準備している。

離婚だけじゃない。
「自分の妻に限って絶対に不倫しない」と思い込んでいる夫がとても多い。
夫の不倫が発覚して離婚手続を進めていたら、実は妻も不倫していおり、その上子供が不倫相手の子供だったというケースも少なからずある。
不倫相手の子供を出産しておきながら夫の不倫を責める妻もどうかと思うが、妻の不倫に全く気づかなかった夫も不覚だろう。

生物学者たちは、女はより優秀な遺伝子を求めて厳選してセックスの相手を選ぶが、男は相手の遺伝子に関係なくたくさんの女性とセックスすると説く。
妊娠した場合の負担を考えれば、女の行動には一理あるような気がする。

とすると、妻が不倫をする相手は夫よりも優秀な遺伝子を持っている相手なのかもしれない。

大企業の地方支社などで、地元採用の女性社員と転勤族との不倫が多いと言われるのは、そのような背景があると推測される。
地場産業に勤務する夫より、大企業勤務の社員の方が優秀な遺伝子を持っていると妻は感じるのだろうか?

いずれにしても、妻の不倫は滅多に露見されない。
私自身数多くの不倫事件(不貞行為に基づく損害賠償や離婚)を扱ったが、妻の不倫が露見した案件はせいぜい10件強だった(夫の不倫はその10倍以上)。

「うちの妻に限って!」という表現の中には、妻の不倫を認めたくないという夫の願望も含まれているのかもしれない。
たくさんの女性と不倫をしているとある男性に、「それなら奥さんが不倫をしても責められませんね」と言ったら、「それは絶対に許さない」という言葉が返ってきた。
なんとも身勝手な話で呆れたが、男にはそういう面があるのかもしれない。

今回、Himalaya の音声配信で、不倫をしている男性から「どうやったら不倫がバレないか?」という相談が舞い込んだ。

今まで露見した人たちの経験値に基づいて3点ほどアドバイスしたが、妻も不倫をしているかもしれないと語っている。

私は、双方が不倫していて家庭も円満であればイーブンスティーブン(お互い様)だと思うのだが、相談者がどう感じているのかいささか気になっている。

荘司 雅彦
幻冬舎
2016-05-28

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年10月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。