最高のバランス感覚が発揮された新内閣を評価する

八幡 和郎

第4次安倍改造内閣の閣僚名簿を分析すると、非常に優れたバランス感覚が光っていると分かる。

官邸サイト:編集部

選挙区を基準に地域別に見ると、東北・北海道2(福島 北海道)、関東(神奈川2 千葉2 埼玉 茨城 栃木)、中部1(富山)、近畿2(和歌山2)中国2(山口・岡山)、四国(愛媛・香川)、九州3(福岡2、大分)で、富山を真ん中に9人ずつ、それに参院比例区の片山さつきだ。

学歴を大学院レベルは無視して出身大学でみると、東京大学6,早大5、京大、成蹊、学習院、日大、法大、上智、明大、ジョージタウンがそれぞれ1名だ。

東京以外の大学は京大中退の一人だけだが、吉川農相は日大卒業後に北大の大学院で学んでいる。慶大がないが河野外相は慶応高校から慶大に進んだのちにアメリカに留学した。

ほかに、ハーバード留学の茂木経済財政相、タフツ大学の原田環境相、ENA(フランス国立行政学院)留学の片山さつき地方創成相がいるし、麻生財務相や安倍首相も留学しているから、学歴をみてもバランスが取れている。

東大卒の5人は、財務省、経産省、建設省2、検察官、民間(新聞社・シンクタンク)でこれも妥当なバランスだ。

世襲政治家についてみると、国会議員に限れば、安倍首相、河野外相、世耕経産相は父ないし叔父からの直接継承。平井IT科学技術相は父親が参議院議員だったときに代議士に。麻生財務相は父親が代議士だったが長期間間を置いての当選だから、突出して世襲議員が多いとはいえない。

基本的な哲学としては、入閣待ちの議員の多さが、お友達人事といわれる批判につながっていることに配慮し、中核部分は留任させる一方で、初入閣組では本人の経験などから危なげない所掌を選んで手堅くまとめた印象だ。国会答弁などでの失言を避けるために、堅実な人事をした印象で、それは、華がないというイメージにはなっているが、仕方ない。

女性については、これまで無理をして登用した結果、人材が枯渇した。これまでの女性閣僚の評判があまりよろしくないから仕方ない。私は女性登用は実務レベルから地道にするべきで、お飾りを増やしても仕方ないという主張だから、これで良いと思う。

小野寺防衛相の離任は残念だが、同じ岸田派で十分に期待に応えたとは言いがたかった林文相をはずすこととのバランスを考え、さらに、半島情勢もいちおう落ち着いている時期であるのでやむを得ない。

石破派からの山下法相の起用は、前内閣における斎藤農相が副大臣から昇格したのと同じく、政務官からの起用だ。副大臣や政務官でがんばったら一人くらいは大臣に昇格するというのは励みになっていいことだ。

小泉進次郎については、安倍首相に懇願しても閣僚にしてもらうべきだった。経験をつまずに政治的遊泳だけでリーダーになってもろくなことはないことは、安倍首相自身が官房長官だけの閣僚経験で首相になって第一次内閣では十分に力を発揮できなかったことが証明している。

八幡 和郎
ワニブックス
2018-09-07