トランプ政権はNAFTA再交渉を行っていたメキシコ、カナダとの間でNAFTA2.0もとい米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を成立させました。欧州とは7月の首脳会談で通商交渉の開始で一致、日本との9月26日の首脳会談では日本側の懸案となっていた自動車関税が回避されました。
今となっては、通商摩擦における最大の不確実性は中国のみという状況。クドロー国家経済会議(NEC)委員長は1日、中国との通商協議に進展が乏しく、早急の合意の可能性が低いと発言しました。しかも、こちらでお伝えしたように、米中の間で通商を超えて軍事面でも緊張が走る場面も。10月4日のペンス副大統領のスピーチの厳しいトーンを受け、ニューヨーク・タイムズ紙が”新たな冷戦の前兆”と報じたほどです。
ウォール街は一連の状況を鑑み、米中関係の更なる悪化に備え始めました。
JPモルガンは、2019年1月1日から米国が中国輸入品全てに25%の関税を賦課するシナリオをベースに、中国の成長率が報復措置を行わない想定で1%押し下げられると予想。人民銀行は10月7日に今年3回目の預金準備率引き下げに踏み切ったものの、経済的打撃は必至となる見通しです。MSCIチャイナ・インデックスの年末の目標株価も下方修正しています。既に1月のピークから24%も急落していますが、年末までに95ポイント巻き戻す見通しを85ポイントへ修正、8.9%程度の下げ幅縮小しか見込んでいません。
ゴールドマン・サックスはというと、米中の貿易戦争という荒波をくぐり抜ける上で、持続的に高い利益率を達成している米国の個別銘柄を推奨しています。粗利益率に注目し、例えば2019年の粗利益率見通しが96%のセルジーンのほか、90%近いアドビやアムジェン、VMウェアなどを挙げています。中国のエクスポージャーの高い銘柄は、当然ながら入っていません。
11月30日に開催されるG20でトランプ大統領と習主席が会談する見通しを残すなかでも、訪中したポンペオ国務長官と王外相との共同会見には大きな溝を感じさせます。
王外相は「米国側は対中への貿易摩擦をエスカレートさせ、台湾にも中国の権利と利益に反する手段を複数も講じ、中国の国内および外交政策に根拠のない批判を浴びせてきた」と辛辣そのもの。ポンペオ国務長官も、負けじと「あなたが取り上げた問題は、根本的に見解の不一致がある」と発言。その上で「中国の行動に大いなる懸念を寄せており、私はそれぞれの問題を本日、協議する機会を楽しみにしている。なぜなら、(米中関係は)非常に重要な関係であるためだ」とかわします。
もちろん、公の場での会見内容を額面通り受け止めてはいけません。G20首脳会議まで1ヵ月半、果たして米中関係に希望の光が差し込むのでしょうか?
(カバー写真:The White House/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年10月8日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。