KYBのオイルダンバーの不正検査については、マスメディアの報道をみているとその建築の安全に重大な影響を及ぼして危険きわまりないようにみえるが、専門家の中には「少し騒ぎすぎ」という人もいる。
おそらくは、耐震性については、問題があるかないかも分かりにくい程度のものであって、「安全です」とは言えないものの個別の案件について大騒ぎすることでないようでもあるという趣旨のことを仰っている信頼性の高い専門家もおられるようだ。
すでに問題になった東洋ゴムのケースでも法的に問題はあるが、安全についてそれほど大きな問題がないケースが多かったとも聞く。
もちろん、それは、きちんと検査しなかったとか、基準に満たないものを出荷したことを容認するものではまったくないし、彼らは厳しく罰せられるべきだ。しかし、それだからといって、それが使われている建築がただちに危険なのかは別だということだ。その違いを理解せずに混同して論じる報道が多いのが困りものだ。
もし、そこの違いが分かっておれば、報道の仕方は違ったものになるはずだ。このことを、Facebookのタイムラインで書いたところ、さまざまな意見が寄せられた。
なかには、こうした問題がおきたときに、あまり心配することはないとコメントすると、記事では取り上げられないとかいうのもあった。
マスコミは専門家に、「問題の建築に住んだりしていて危険はあるのでしょうか」とか「建て直す必要はあるのでしょうか」などと聞いてから記事にするというステップをどうして踏まないのか。もちろん、関係者は処罰されるべきだし、慰謝料的なものも含めた補償もしなければならないが、風評被害で必要以上に危険であるかのような印象を振りまけば、結局、本来は被害者である所有者や利用者がかえって迷惑することになりかねない。
場合によっては、公表や内部告発のブレーキになるのも心配だ。悪に厳しく対処するのは正義だが、どの程度、けしからんことなのか、被害者にとってどうするのがいちばんいいのか、再発防止のために何がいいのかをバランス良く考えることを否定するのはいかがなものか。
さらに、企業の不正への厳しい対応は日本の企業の信用を高めるともいえるが、かえって、経営を危うくし、結局、より企業意識が高いとも思えない、中国などの企業に買いたたかれるのが良いとも思えない。
さらに、建築の安全についていえば、旧耐震(1981年以前の耐震基準での建物)が、すでに新基準が採用されて40年近くたってもそのまま使われている方がよほど問題という声もあった。それはもっともだ。
地震のときの大火の原因になりそうなのは、そういう建築なのではないか。