内閣支持率は何によって規定されるのか

秋の臨時国会が開会した。入管法改正案や消費増税、新大臣の資質のテーマを中心に日々審議が行われている。そういった中、11月上旬に実施されたNHK世論調査によると、安倍内閣を「支持する」と答えた人は、先月の調査より4ポイント増の46%となっている(「NHK世論調査」2018.11.13)。

自民党サイトより:編集部

「内閣支持率」は内閣の存立を左右する重要指標である。来年の参議院選挙、そして安倍首相悲願の憲法改正を進めていくにあたっては、内閣支持率がどの水準にあるかが重要なファクターになることは間違いない。

では、そもそも内閣支持率はどのような要因によって規定されるのであろうか。本稿では、その要因を整理し、今後の動向について考察を加えてみたい。

内閣支持率を規定する要因

従来記述的に説明されてきた内閣支持率の研究に対して、政治学者の三宅一郎らは55年体制下の内閣を対象に、世論調査等のデータを用いた実証的研究を試みている。その結果、内閣支持率を規定する要因として以下が確認されている。

まず効果が認められたものは以下3点である。「①与党支持基盤効果」は、現政権で言えば自民党や公明党の政党支持率が内閣支持率のベースを一定形成していることを示している。「②衰退効果」は、ほとんどの内閣は時間の経過とともに下落していく傾向を表している。「③主観的経済評価」は、日経平均などの客観的経済評価が個人の主観的経済評価に影響を及ぼし、その評価が支持率に影響を及ぼすというものである。

わずかながら効果が認められたものとして「④ハネムーン効果」がある。新政権発足時における期待感を示したもので、発足後の1か月においては支持率上昇が認められる。一方、効果が認められなかったものとして「⑤改造効果」「⑥国政選挙活性化効果」がある。前者は、内閣改造時の支持率向上であり、後者は国政選挙直前になると有権者の態度決定や露出などによる支持率向上であるが、いずれも研究では有意な結果が認められなかった。

なお、データの有無などの理由から首相個人に対する「個人評価効果」を分析に加えていないが、重要な要因である指摘がなされている。首相や大臣の個人的評価については、拙稿「なぜ野党はパフォーマンスに終始するのか」にて触れた通り、内閣支持率の増減に影響を及ぼしていることがANN世論調査などから明らかになっている。

外交成果で支持率を盛り返した小泉内閣と安倍内閣

その他、支持率に影響力を持つのが「外交成果効果」である。それを最も顕著に表していたのが、2002年小泉政権下で行われた北朝鮮電撃訪問とそれに伴う拉致被害者の帰還である。

田中真紀子外相の更迭によって一気に40%にまで急落した支持率であるが、北朝鮮との外交成果により70%まで持ち直した。同じく2016年の安倍内閣においても、トランプ大統領当選後にすぐさま安倍首相が訪問を果たしたことで支持率が上昇したことは記憶に新しい。

この30年間、安定した長期政権を維持できたのは小泉内閣と第二次安倍内閣である。この両者に共通する要素の一つは紛れもなく「外交成果効果」を上げてきた点だと言えよう。

内閣支持率を求める式

以上、実証的先行研究や近年の傾向を分析してみると以下のような式に整理が出来る。

この観点から安倍政権の支持率対策を考察すれば、「主観的経済評価」の効果を高めるためには経済政策に注力することが必要となる。そして、主観的経済評価に最も影響及ぼす客観的経済評価の指標は「日経平均株価」である。故に、株価維持は内閣支持率の為に重要である。(内閣支持率と日経平均との関係性については次回論じたい)

また、安倍首相の積極的な外交は「外交成果効果」を高めるための行動とも言える。最近の経済的な不安要素(株価の乱高下、米中貿易戦争等)を考慮すれば、外交で成果を挙げることがより重要となってくる。11月14日からのASEAN等首脳会議や日露首脳会談後の外交成果は安倍政権の今後の支持率を規定しうる重要な要因となるであろう。

一方野党においては、唯一の攻めどころといえる「個人評価効果」をターゲットとし、モリカケや新大臣の任命責任と絡め、首相個人の信頼性に対する批判を展開している。

安倍政権としては、「個人評価効果」での失点を防ぎ、「主観的経済評価」を維持し、「外交成果評価」で得点することで、内閣支持率を少なくとも50%以上に引き上げ、今後の重要施策の推進、憲法改正の論議につなげていきたいところであろう。

堀江 和博(ほりえかずひろ)
1984年生まれ。滋賀県出身。京都大学大学院公共政策教育部公共政策専攻。民間企業・議員秘書を経て、日野町議会議員(現職)。多くの国政・地方選挙に関わるとともに、政治行政・選挙制度に関する研究を行っている。
公式ブログ(アメブロ)
公式サイト