著作から見えてくる政治家の真実①鷲尾英一郎という政治家

政治家の本といって、多くの人が想像するのが大物政治家の回顧録の類だろう。回顧録は、当事者の解釈が介在しているが、他の誰も知ることの出来ない真実の一面を知ることが出来るという意味で、非常に興味深い。少し前になるが、山崎拓氏の『YKK秘録』を読んだが、これは抜群に面白い回顧録だった。

回顧録だけでなく、現職の政治家の書いた著作も読んでみると色々な意味で面白い。政策について書いてある部分を読むのは退屈なことが多いが、その政治家が何故、政治家を目指したのか、あるいはその政治家自身の基本的な哲学が書かれていている部分が面白い。

政治家の本に言及すると「あんなゴースト・ライターの書いた本なんてくだらない」という意見を耳にするが、私はこういうことを言ってしまう人の政治的センスのなさに呆れてしまう。仮にゴースト・ライターが書いた本であったとしても、本人の名前で出版している点に意味がある。

自分自身が全く思ってもいないことを自らの著作に平然と書き連ねているような政治家であれば、それは相当いい加減な政治家であることがわかるし、自らの著書で語った哲学をそれ以降の行動で裏切るような政治家であれば、その政治家の言葉を容易に信じてはならないことがわかる。

今回、取り上げてみたいのは鷲尾英一郎代議士の『全身政治家』(幻冬舎)である。本書の記述を随時紹介しながら、鷲尾英一郎という政治家について語ってみたい。

鷲尾英一郎
幻冬舎
2016-01-15

 

 

『全身政治家』から読み解く 鷲尾英一郎

一言で要約するなら、民主党、民進党議員の中では少数派であった保守系政治家といえよう。著書『全身政治家』では、「いちばん言いたい『歴史の大切さ』いついてでは、戦前の日本を一方的に断罪する歴史の見方を批判し、第一次世界大戦後、国際連盟の創設に際し、「人種差別撤廃条項」の挿入を求めた日本の理念にも敬意を表すべきだと主張している。

「現代もまだ人種差別で苦しんでいる国がたくさんありますが、大正時代の日本は人種差別撤廃への努力を惜しまなかった。こういった事実は、日本人が知らずして誰が知るのでしょう。私たちが知って、後世に伝えなければいけないと思うわけです」(248頁)

そして、日本を一方的に断罪するような歴史認識についても次のように批判している。

「人間は良いこともすれば悪いこともする。世の中に『全部良い』『全部悪い』はありません。戦争によって内外に大きな不幸をもたらしたという事実はあっても、全否定していいのかという問いは持ち続けなくてはいけないと思います」(253頁)

ところで、昨年の総選挙の際には、民進党の議員が大挙して小池都知事率いる「希望の党」へと押し寄せたが、こうした流れに断固として反対したのが鷲尾議員だった。「都民ファースト」を掲げる政治家が率いる政党に所属することは、「新潟県民党」を主張してきた自分の筋が通らないとの理由だった。

正直にいうと、私自身は希望の党が出来、鷲尾議員にとって、よりよい政党が誕生したと思っていた。ようやく現実的な野党が出現したと思ったからである。だが、本人の断固たる決意を聞いて、逆に感銘を受けた。本当に筋を通す政治家なのである。

現在、鷲尾議員は現在完全なる無所属議員だ。政策理念において分裂しながら、選挙で勝つことだけを目的とする「野党共闘」には一貫して反対している。野党は政権交代を実現する現実主義的政党を目指すべきだが、現在の野党は「野党共闘」の名の下で共産党と一緒になって活動を展開している。こうした勢力と一緒になることは出来ないという立場だ。

こうした基本哲学も本書において明確に記されている。

鷲尾議員は与野党の議論について次のように指摘する。

「国民の理解に資する議論の仕方とは、お互いがお互いの言い分を平行線のように言い合うことではありません」(6頁)

そして、議論に関しては平行線のまま、パフォーマンスに終始する野党のあり方についても厳しく批判している。

「国会で議論する権利を与えられていない皆さんが、それぞれの思いの中で、やむにやまれず下も活動をするのは理解できます。われわれは議会の中で議論する権利を与えられています。議論する権利が与えられているにもかかわらず、なぜプラカードなのでしょうか」(7頁)

さらに、希望の党の合流で右に行ったかと思った野党が、今度は左に急旋回し、「野党共闘」を掲げていることに関しても鷲尾議員は一貫して批判的である。野党議員の中には、鷲尾議員がぶれたと批判する議員も存在するが、これは奇妙極まる言いがかりの類である。このあたりの経緯については、本人のブログを参照していただきたい。

鷲尾議員が目指していた野党とは政権交代が可能な野党であった。いつまでも反対のための反対に終始するような政党ではない。ましてや共産党とは基本的な政治立場が異なる。

共産党について鷲尾議員は次のように述べている。

「2大政党の器に共産党がなりえるのか?有りえない話です。われわれは皇室を否定し、日米同盟を否定し、自衛隊を違憲と断じる共産党を権力に与らせてはなりません。共産党のひびきのよい主張を前に、彼らの地金に対する警戒を解いてはなりません」(297頁)

政治家が自らの名で記した著作を読み解くことによって、本当にぶれている政治家が誰なのか、ぶれずに一貫している政治家が誰なのかが見えてくる。

12月1日、大阪で鷲尾英一郎議員の講演会が開催される。是非、主張に耳を傾けていただき、本物の政治家なのか、否かを判断していただきたい。

※今後、自分が面白いと思った政治家の著作を読んだら、紹介していきます。その意味で①とさせていただきました。

【日本歴史探究会 12月講演会のお知らせ】
◇講師
鷲尾 英一郎 先生(衆議院議員・新潟2区)
◇演題
「日本政治の課題」
◇日程
2018年12月1日(土)
12:30開場 / 13:00開演予定 / 講演2時間(予定)
◇会場
ホテル コンソルト 新大阪 「エチュード」
(大阪市淀川区 西中島1-12-7)
◇特典
『全身政治家』をプレゼント
◇参加費用
1,000円
◇主催
一般社団法人 日本歴史探究会
◇協力
大和大学雄弁会まほろば
お申し込みは Google フォーム またはPeatix よりお申し込みください。


編集部より:この記事は政治学者・岩田温氏のブログ「岩田温の備忘録」2018年11月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は岩田温の備忘録をご覧ください。