47都道府県の名門高校や新興勢力の現状はこうだ

八幡 和郎

私はなんの専門家なのかとよく聞かれるが、著作家としてのデビュー作がなんであるかというと、雑誌論文的なものでは「教皇レオ13世とその社会思想」といったものであり、総合雑誌に発表したものでは、「山本益博にもの申す」というグルメ論だ。木村尚三郎先生の推薦で出したものだ。

そして、単行本はゴーストライターとして2冊ほど書いたのは別にすれば、フランス留学から帰ってきて書いた「フランス式エリート育成法~ENA留学記」(中公新書・1984)であって、その後、教育ものとしては、「逃げるな、父親―小学生の子を持つ父のための17条 」(中公新書ラクレ・2001)、「47都道府県の名門高校―藩校・一中・受験校の系譜と人脈 」(平凡社新書・2008)を刊行している。

八幡氏の母校でもある滋賀県立膳所高(Wikipediaより:編集部)

そののち、しばらくご無沙汰していたが、このほど、「日本の高校ベスト100」(啓文社書房)という本を出すことにして、こんどの週末あたりから店頭に並び始める。

私は日本の高等教育はあまり評価しないが、初等中等教育はいろいろ混乱しているが、それでも、世界トップクラスだと思っている。

近代日本において、全国のどこで生まれても、地元の各都道府県に名門高校があり、良質な高校教育を受けることができるのは、国力の源泉となってきた。江戸時代の優れた教育制度が、日本の近代化の礎になったというのは俗説に過ぎず、実際は、明治維新までの日本の学校制度はまったくお粗末だった。とくに、庶民には寺子屋以上の教育を受けるチャンスはほとんどなかった。

しかし、明治新政府が成立するや、義務教育など近代的な教育の確立に格別の努力を払い、東京や京阪神のような大都市に留まらず、全国47都道府県それぞれに、旧制中学(現在の中学校+高校)をはじめ、いろんなタイプの中等教育校が誕生した。

本書は、全国から名門高校を100校を選び、その歴史や教育方針、最近における新しい試み、進学実績などを紹介しようというものである。また、番外として13校を加えたり、ライバル校についても説明している。

もちろん、選ばれた高校の生徒や卒業生にも読んで欲しいが、これから受験期を迎える子や孫を持つ両親や祖父母のみなさんにも、自分たちの時代と現在の状況の違いを正しく理解していただき、子供たちが正しい選択をするように助言するのにも役に立てばいいと思っている。団塊の世代の祖父祖母など、最近の状況をわからずに意見を言えば、うるさがられるだけだが、そういう人たちに少しばかり力になることができたらいいと思っている。

本書は、全国から名門高校を100校を選び、その歴史や教育方針、進学実績などを紹介しようというものである。ただし、いわゆる受験名門校だけではなく、大学の附属高校、女子高、実業系学校など、独自のカラーを打ち出し、定評を得ている高校も選に加えている。とくに、女子高の数が多くなっているのが本書の特徴の一つだ。

また、選ぶにあたっては、歴史的な価値のみならず、現在の状況や、将来の見通しも考慮した。選考の過程を述べると、まず113校を選び、その中から、歴史はあるが、現状は名門校と呼ぶにはやや不満な高校や特殊な高校を除くなどして、さらに100校を選び、残り13 校は「番外」とした。その結果、巷間の難関大学合格者ランキングには載っていない名門高校も紹介している。

都道府県から公立高校を最低でも1校は選んだ。原則としては、「旧制一中的な学校」(以下、「旧一中」と略す)を取り上げている。ただし、旧一中よりかなり長期にわたって実績を上げている高校がほかにあり、かつ、その県から公立高校を1校しか選べなかった場合は、その実績を上げている高校の方を取り上げている。

浜松工業高校(静岡県)、八幡商業高校(滋賀県)、浦和第一女子高校(埼玉県)、鴨沂高校(京都府)、米沢興譲館高校(山形県)などは、それぞれ、工業高校、商業高校、旧制高等女学校、西日本に多い新制の公立女子高校、藩校から断絶なく伝統を引き継いでいるまれな高校の代表として取り上げた。日本最大の高校ということで作新学院(栃木県)も紹介している。

どんな高校を入れたかは、表紙の写真から読み取れるかと思うが、都道府県別の選考理由は、回を改めて紹介したいと思う。

(北海道)札幌南・北嶺
(青森)弘前
(岩手)盛岡一
(宮城)仙台一・仙台二
(福島)福島・*会津
(秋田)秋田
(山形)山形東・*米沢興譲館
(茨城)水戸一・土浦一
(栃木)宇都宮・*作新学院
(群馬)前橋・高崎
(埼玉)浦和・*浦和第一女子
(千葉)千葉・渋谷幕張
(東京)日比谷・西・戸山・筑波台付属・筑波大駒場・麻布・開成・早稲田学院・*学習院・桜蔭・ 雙葉&田園調布雙葉・女子学院・創価
(神奈川)湘南・栄光・聖光・フェリス・慶應・日本女子大
(山梨)甲府南
(長野)松本深志・長野
(新潟)新潟
(富山)富山中部、高岡
(石川)泉ヶ丘、金大附属、
(静岡)静岡・浜松北・*浜松工
(愛知)岡崎・旭丘・東海・金城学院
(岐阜)岐阜
(三重)四日市・高田
(福井)藤島
(京都)洛北・*鴨沂・堀川・洛星・洛南・同志社
(滋賀)彦根東・膳所・*八幡商
(大阪)北野・天王寺・大手前・三国ヶ丘・大阪教育大付属・清風&清風南海・四天王寺
(兵庫)姫路西・神戸・灘・甲陽・神戸女学院
(奈良)畝傍・奈良女付属・東大寺・西大和
(和歌山)桐蔭・智辯和歌山
(岡山)岡山朝日
(広島)*広島中等教育校・広島大付属&同福山・修道・広島学院
(山口)山口
(鳥取)*鳥取西
(島根)松江北
(香川)高松
(徳島)*城南・徳島文理
(高知)追手前・土佐
(愛媛)松山東・愛光
(福岡)修猷館・小倉・久留米大付設
(佐賀)佐賀西
(長崎)長崎西
(熊本)済々黌・熊本
(大分)大分上野丘
(宮崎)宮崎大宮
(鹿児島)鶴丸・ラサール
(沖縄)*首里
*は番外。主として近年の進学実績が理由。詳しい選考理由は次回。

八幡和郎
啓文社書房
2018-12-12

 

八幡 和郎
中央公論社
1984-04