皆さま、昨年5月にこんな事件が報道されたことはご存知でしたでしょうか。
1歳児衰弱死、両親は近所と交流少なく 金銭的な苦労か…男の勤務先、遅刻や無断欠勤なく真面目(埼玉新聞)
1歳児衰弱死、桶川市が育児支援を継続中に事件 部屋に異臭などせず、市健康福祉部「強制的な確認難しい」(埼玉新聞)
全国的なニュースにならなかったので、当時は私も知らなかったのですが、仲間達の情報網からこの事件を知り、驚愕したのですが、なんと原因は両親がゲームに熱中していたためというのです。
夜にゲームを優先、ミルク与えず乳児が衰弱死…痩せるも医療機関を受診させず 夫婦が認める/さいたま地裁(埼玉新聞)
1歳乳児衰弱死…母、夜から朝まで実家でゲーム 課金で生活費不足 ミルク薄め、あげる回数減らす/地裁(埼玉新聞)
ついにこんな事件が起きてしまったか・・・と暗澹たる気持ちです。
記事から読み解くに、父親の方は会社には真面目に行っていたようなので、ゲーム依存症だったかどうかは、判断つきかねますが、この母親は一日中ゲームに没頭していたようですので、間違いなく、ゲーム依存の状態にあったと思います。
そして依存症によって、ネグレクトしてしまうことは十分ありうると思います。
このご夫婦の場合、友達もおらず、母親は対人恐怖症と言っていますし、両親揃って、子供が衰弱していることを理解しながら何ら手当をしていないということは、もしかしたら他に何か精神疾患や障害などを抱えていたかもしれません。
ただ記事を読むと、市は育児支援を行っていたということなので、もう少し踏み込んだ手だてができなかったのか?と残念でなりません。
ポイントは、記事の中にあるここですよね。
長男や次男を出産した際は父や妹2人が育児を手伝ってくれたものの、三男が生まれてからは父が手術をしたり、妹が仕事のため、育児の相談ができなかったと説明。
保育園にも入れず、自治体の担当者も代わって、「誰にも頼れなくなった」と答えた。
3人のワンオペ子育てに対し、保育園に入ることもできず、自治体の担当者が変わってしまった。
この時、担当者間のしっかりした引き継ぎがあれば、事件は防げたのではないでしょうか?
もちろん児童相談所や自治体の方々が、大忙しで対応にあたっていることは重々承知しておりますが、
「行政が関わっていながら何故?」
といった事件があとが立たない現状は早急に改善すべく、予算と人を増やして欲しいと思います。
また、両親や兄弟等に頼ることのできないワンオペ育児に対して、保育園に入園できるか、家事育児が軽減できるようなサービスを提供するなど、国はなんらかの対策を、いい加減迅速に講じるべきだと考えます。
そしてゲーム依存対策です。
孤独と孤立、そこに入り込むゲーム。
今やゲーム依存は子供達の問題だけではありません。
こうして子育てママの中にも問題が起き、大人の間でも、課金による金銭問題から犯罪にもなっています。
つい先日も、公務員による課金のお金欲しさの事件が立て続けに起きました。
埼玉県警の22歳刑事を詐欺容疑で逮捕 スマホゲーム課金で借金苦か
ゲーム依存対策をこれ以上遅らせてはなりません。
ゲーム依存がギャンブル依存の二の舞にならぬよう今すぐ対策の構築をお願いします。
既に国と経済界は「e-sports」の発展に躍起になっていますが、経済成長ばかりを夢見て、負の側面に蓋をしていたのでは国力は衰える一方です。
ゲーム依存問題は、まがりなりにも年齢制限があるギャンブル依存とは違って、子供から大人まで問題が直撃します。
もうすでにギャンブルに負けず劣らずの大問題となってしまっている可能性はありますが、調査や支援の受け皿、家族会などが殆どない状態なので、実態が見えないまま、問題が水面下で進行しています。
国は、少子化やメンタルヘルスの問題が蔓延している日本の福祉分野に関し、経済界にも理解と協力を求め、産業の成長に伴う負の側面への対策に協力を仰ぐべきです。
そしてゲーム業界には早急に、大規模な依存症対策を打ち出して欲しいと願います。
国民は国の宝。
その宝をこれ以上予防できる問題で、みすみす失ってはならないと思います。
編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年12月6日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。