こんにちは、都議会議員の鈴木邦和です。今年10月に東京都の工業用水道の廃止が決定しましたが、都の試算では使わなくなった配水管の撤去費用として770億円掛かる見込みです。
私はこの支出に大きな疑問を持っています。770億円とは、保育園を230園以上新設して定員2万人以上確保できる予算額です。誰の役にも立たない道路下の水道管を撤去するためだけに、770億円もの税金を使うことは果たして妥当なのでしょうか。
少し補足説明をさせて頂きますと、工業用水道は、一般の家庭が使用する上水道とは別に東京都が運営してきた水道です。50年以上前に整備したものですが、都内の工業需要が減る中で、老朽化する配水管の更新コストに2300億円掛かることもあって、今回廃止することになりました。
私は、今年10月の廃止決定後に、本件の担当委員会に所属となり、この水道管の撤去費用770億円に疑問を持ちました。仮に使わなくなった水道の配水管をそのまま地中に置いておく場合、配水管が潰れて道路が陥没するリスクは極稀にありますが、配水管内にモルタルを充填すればそのリスクもなくなります。
そして、私の方で調査を進めたところ、モルタルを充填して配水管を残置する場合に掛かる費用は、配水管を撤去する場合と比較しておよそ1/20の費用とのことがわかりました。つまり現在770億円を見込んでいる配水管の撤去費用は、モルタル充填後に残置すればたった40億円で済みます。この方法であれば700億円以上の税金を節約することが可能です。
しかし、そこで立ちはだかるのが道路法です。現行の道路法第40条では「道路占用者は、道路の占用を廃止した場合においては、道路の占用をしている工作物を除却し、道路を原状に回復しなければならない。」と定められています。つまり、現行の道路法では、配水管の残置は基本的に認められていないというのが都の見解でした。
私は、本件について夕張市の事例も調査しました。夕張市は、2007年に財政破綻してから市の水道事業を大きく縮小しています。そして、私がヒアリングした限りでは、夕張市は使わなくなった配水管を完全に撤去することが、すでに事実上困難な状況にあると感じました。現実に法律が追いついてないのです。
全国で250近くある工業用水道は更新時期にあり、今後は他の自治体でも廃業する工業用水道が出てきます。また、急速な人口減少を迎える地方では、上水道事業でも使わなくなる配水管が増えていきます。そうした中で、国や地方自治体の財政状況が益々悪化していくと、使わなくなった配水管の撤去費用をもはや捻出できない自治体というのが全国で増加していくはずです。
もちろん財源が豊かにあった時代ならば、配水管は撤去したほうが望ましかったでしょう。しかし、厳しいトレードオフを迫られる今後の自治体経営において、限られた財源は、不要な水道管を撤去するために使うのではなく、より市民の生活につながる政策に使うべきです。
本件については先日の委員会で質疑し、水道局からは「廃止経費の縮減についても幅広く検討する」旨の答弁がありました。東京都の配水管の廃止計画は2022年度にまとまります。それまでにこの770億円の廃止コスト削減に向けて、道路管理者との協議など現行法で出来ることを追求していきたいと考えています。
編集部より:この記事は東京都議会議員、鈴木邦和氏(武蔵野市選出、都民ファーストの会)のブログ2018年12月19日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は鈴木氏のブログをご覧ください。