中国が経済成長の裏で学んでいた日本の失敗

藤巻 健史

習氏「党の指導を堅持」:日本経済新聞

中国は40年前と比べて名目GDPが220倍になったそうだ。1978年12月に採用された改革開放政策で「計画経済を放棄し市場経済にシフトしたから」との分析だ。一方、ますます計画経済化が進む日本の名目GDPは40年間でたったの2.5倍強である。

官邸サイトより:編集部

220倍対2.5倍。日本の経済発展は先進国中ダントツのビリなのだ。「景気が1年前より良くなった」「安倍政権発足当時より良くなった」という次元の話ではない。優秀な民族なのに、経済成長がダントツにビリなのはなにか根本的原因があるとしか思えない。枝葉末節な技術論で解決できる話ではない。

日本経済低迷の原因は日本が世界最大規模の社会主義的運営国家だったからだと思う。JPモルガン勤務時代、部下の外国人は日本駐在を終えて帰国する際、ほぼ全員が「日本は世界最大の社会主義国家だ」と言って帰国していった。日本で生活をし、働いた後の感想だ。「大きな政府」「規制過多」「税制をはじめ機会平等ではなく結果平等志向」「社会主義的株主資本主義」等に社会主義的傾向がよく表れている。

日本では「資本主義は終わった。資本主義では成長できない」などのコメントをよく聞くが、そうではない。「日本は社会主義的だったから駄目だった」のだ。社会主義が資本主義に敗れることは歴史が証明している。
社会主義的運営により、市場原理が働かず円が国の実力より高すぎたのも経済低迷の原因だ。

中国は日本の失敗を見てよく勉強している。市場経済を推し進めた上に、ペッグ制で人民元を低く抑え続け、世界の工場となった。1980年に1人民元は160円もしたのが今やほぼ16円で買える。1ドル=100円が1㌦=1000円になったようなものだ。これなら世界での競争にうち勝ち容易に世界の工場になれる。この結果が「中国の名目GDP40年間で220倍」なのだ。

因みに2018年の訪日外国人数が3000万人を突破したというニュースが昨日の朝刊各紙に出ていた。安倍首相は安倍政権の成果だと自慢するが、私は極めて疑問に思う。知人の外国人の分析によると「日本旅行が安くなったせいだ」と言う。

日本が経済成長しないので、相対的に日本が他国に比べて貧乏になったから日本への旅行が安くなったせいというのだ。

日本人は、昔、経済成長しておらずすべてが安い東南アジアに頻繁に出かけ爆買いをした。今、日本が、当時の東南アジアの位置になってしまったのだ。外国人旅行客の増大は自慢するものではなく、日本の経済政策の失敗のたまものなのだ。

通貨が10分の1になれば、海外旅行など高すぎて出来ないはずだ。
1ドル=100円の時1000ドルのハワイ旅行は10万円だが1ドル=1000円になれば100万円となると考えればわかりやすい。

人民元が10分の1になってもなぜ中国人がこれほど日本を訪れるのか?40年間で一人当たりの可処分所得が152倍になったからだ。人口が変わらなければ、名目GDPが上がれば、一人当たりの収入も当然増える。
通貨が10分の1になっても可処分所得が152倍なら15倍豊かな生活ができる。

日本は名目GDPがたったの2.5倍だから一人当たりの可処分所得もほとんど変わっていないだろう。中国人にとって、相対的に貧乏になった日本観光は安くつくのだ。

日本は経済的に世界の成長から取り残されている。その認識が日本人にも日本の政治家にもない。根本的な改革が必要な時だ。政治が改革を行わないのなら市場が改革を行う事になるだろう。人はそれを「市場の暴力」というだろうが、それは「根本的問題を分析・対処しなかった」結果の人災である。


編集部より:この記事は、経済評論家、参議院議員の藤巻健史氏(比例、日本維新の会)のFacebook 2018年12月19日の記事を転載させていただきました。転載を快諾された藤巻氏に心より御礼申し上げます。