先日、知り合いの人事部長さんからこんな質問をされた。
「うちも新卒採ろうと思うんですけど、アマゾンとかネットフリックスみたいなすごい会社の話じゃなく、普通の日本企業が普通に新卒採用を上手くやるための教科書みたいな本ないですか?」
そういえばないんですよそういう本。すごいエッジの効いた採用の本ならいっぱいあるんだけど、意外と普通の新卒採用の手順を解説したものは記憶にある限りない。
と思ったら今年の積読の中で格好の一冊を見つけたので紹介しておこう。
新卒採用を行う上で基本中の基本である母集団の作り方から、会社説明会、就職フェアへの参加方法、各面接の位置づけと採用チームの立ち上げ方法まで、本書はほぼ一冊で新卒採用を網羅する。
たとえば学歴の読み方。
1つヒントになるのは「大学名よりも、高校の偏差値」です。実際、私が人事部長時代、1から「最高の採用チーム」を創るために、人材紹介会社に人事の採用担当者ポジションは「偏差値68以上の高校を卒業している人を紹介してください」とオーダーしていました。
なぜ高校を判断基準にするのかといえば、大学入試とは異なり、偏差値の高い高校にスポーツ推薦で入学できるケースは日本ではまだ少ないからです。
採用数の多くない中小企業であれば、ハコモノを借りるより、コミュ力の高そうな学生を一本釣りしてちょっと豪華な食事でも食べさせてあげた方が費用対効果はいい。
合同会社説明会に参加する時には、母集団単価フィーを産出します。集客のために媒体等に費やした費用を、実際に接触できた学生数で割り算します。その値が仮に1万円だったら、1人当たり6000円の焼き肉を食べたほうが安い計算になります。
「焼き肉をごちそうするから、友達も連れておいでよ」ということになれば、安い単価で、より多くの学生と接触できるわけです。
リクナビの利用に300万円かけたとして、エントリー数はある程度のボリュームがあっても実際に説明会に来たのが300人どまりなら、単価は1万円。来た学生に1人ずつ1万円払ったことと同じです。それなら大きなコミュニティを持っている何人かの学生と食事に行った方が、効率的で割安です。
ランチならさらに安い単価で済むでしょう。1人1000円程度の焼き肉ランチで1テーブル3人。それを何組も行えば母集団は形成できます。
あんまり大きな声じゃ言えないけど、採用数が100人行かないような会社だとリクナビ使うより本書も言うように口コミなどのリファラル採用に軸足を置いた方が効率的だと筆者も考える。
説明会の位置づけは学生にとっても参考になるだろう。
会社説明会は、採用したい学生を選び出す場ではなく、採用しない学生を決める場です。「絶対に採用することはありえないな」という人物を見極めることが優先目的。明らかに採用しない学生にまで時間を費やして選考面接をするのは、忙しい企業にとって時間がもったいないからです。
過渡期にある新卒採用だが、微調整するにしてもオーソドックスな仕組みは理解しておくべきだろう。新卒採用を検討している経営者や人事担当におススメの良書だ。
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2018年12月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。