ホームレスからハーバードへ…夢実現は個人の力か?環境か?

黒坂 岳央

こんにちは!黒坂岳央(くろさかたけを)です。
※Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

リズ・マレー氏の半生を描いた映画のDVDカバー(Wikipediaより:編集部)

久しぶりに映画をみました。「Homeless to Harvard」です。

最近、あまり感動する映画には出会えませんでしたので、久しぶりのヒットでした。いやあ、素晴らしいの一言!近年、「必死に努力するのってダサい」という風潮もありますが、やっぱり必死に努力をして人生を切り開く姿は見ている人の心を打ちます。鑑賞後はいつの間にか、一筋の涙が頬を伝っている事に気づきました。まだご覧になっていない方は、ぜひ一度見てみてもらいたいと思える名作です。

簡単な映画の概要

ニューヨークのサウスブロンクスの貧民街に生まれたリズは、無職の父と麻薬中毒の母親に育てられます。母親は薬物中毒の結果、エイズで死亡します。食事はシリアルを水につけたものを食べるだけ。お金がないので、学校に通うこともままなりません。しかし、父親は読書が好きで、ゴミ捨て場から拾ってきた百科事典を読んでいました。リズもそんな父親の教えを大事に、学校の授業には出なかったものの、百科事典を読み漁っていたことで成績は優秀でした。

が、母親が亡くなり一家は離散。リズは16歳まで地下鉄のホームで寝泊まりするホームレスになります。が、幼き日の父親の教えである、「本を読みなさい。勉強をしなさい」という言葉で覚醒、お金がかからない高校に通いました。そこでは、アルバイトをしながらも必死に勉強をして成績は学年トップ。学校のイベントで、ハーバード大学の見学ツアーに参加したリズは衝撃を受け、「勉強がしたい」という気持ちが生まれます。

3000人の応募者中、6名しか合格ができない、ニューヨーク・タイムズが主催する奨学金プログラムに突破しました。これにて、ホームレスからハーバード大学へ入学する夢のチケットを獲得したのです。

成功したのは環境ではなく、リズの意志の力

人は環境によってほぼ人生が決まります。お金持ちの子供は多くはお金持ちになるし、その逆もしかりです。しかし、私は「環境ですべてが決まる」とは信じたくないと常々思っています。

これまで何度も書いている通り、私もかなり社会の底にいました。家を銀行に取り上げられ、就活スタートがリーマンショック直後になる事が決まったときには、神様の運命のイタズラに絶望したものです。しかし、社会的な地合いが良くなくても努力して、行動すればきっと道は切り開かれると信じて今日までやってきました。ありがたいことに、願った事の多くが適い、「むしろあの逆境が今の自分のハングリーさを作ってくれた」とこれまでの境遇に心から感謝しています。

映画のレビューの中には、「リズが成功できたのはやっぱり環境のおかげ。父親の教えがあったからだ」という声もいくつかありますが、私はそうは思えません。100人、同じ環境に放り込まれれば99人は母親と同じ薬物中毒の道をたどっていたでしょう。しかし、リズは違いました。彼女は努力して勉強をして、人生を変えたのです。いかに環境が悪くとも、強い意志の力は運命をも変える力を持っているのです。

私は彼女の成功は環境ではなく、個人の意志の力によるものだと心から思います。

リズ・マレー氏(ツイッターより:編集部)

必死に努力することはダサくなんかない

今の若い人の中には、「必死に頑張るってなんだか昭和チックでダサいよね」と思っている人も、結構多いのではないでしょうか。特に会社員として頑張る、というのは昔ほど報われる社会ではないかもしれません。経済が右肩上がりに成長し、遅刻せず真面目に勤続年数を重ねれば、出世していた時代は終わりを迎えました。

でも私は、それでもこれからを生きる若い人には、「必死に努力することの素晴らしさを伝えていきたい」、とこの映画を見て思い直しました。今の日本はゆるく、楽しく、好きに生きる事が「クール」とされているかもしれません。もちろん、そのような価値観は否定しません。

自分の人生を最大限楽しむ、充実した生き方は、間違いなく「一流」でしょう。でもひたむきに努力する姿で他の人を啓蒙し、他の人の人生を救う事が出来るならば、それほどカッコいい事はないと思うのです。それは一流を超えた「超一流」ではないかと思います。

私もこれからの残りの人生は、超一流を目指すべく、他者を救うための活動に励みたいと思っています。具体的に何をするのかは答えは見つかっていませんが、ビジネスをしながら模索しています。

今回のホームレスからハーバード大学へ進学した、リズの強い意志を目の当たりにして、ますますその想いが強くなるのを感じました。素晴らしい映画に出会えた強運に、心から感謝しています。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。