ミラーレス一眼に深層学習技術を活用するオリンパス

オリンパスは、35mmフルサイズより二周り小さいセンサーを使うミラーレス一眼・マイクロフォーサーズ規格のカメラを、パナソニックと共に市場に投入してきた。オリンパスは、フィルム時代から、一眼レフの「OMシステム」などに見られるように、小型軽量にこだわるメーカーである。

パナソニックは、従来のマイクロフォーサーズ規格のミラーレス一眼だけでなく、フルサイズセンサーを搭載する「LUMIX Sシリーズ」を今年3月末に発売予定であるが、オリンパスは引き続きマイクロフォーサーズ規格のカメラのみ販売するようだ。

1月24日、オリンパスは、最上位機種の新モデル「OM-D E-M1X」を2月22日に発売することを発表した。2016年12月に発売された「OM-D E-M1 Mark II」と並ぶプロフェッショナルモデルになる。

オリンパス OLYMPUS OM-D E-M1X(プレスリリースより:編集部)

非常に興味深いのは、人工知能の深層学習技術を活用した「インテリジェント被写体認識AF」という機能が組み込まれていることだ。デジカメWatchの報道によれば、

AI技術の一種であるディープラーニングデクノロジーを開発に活用して、オリンパスが数万枚の写真から辞書を作って学習させた。これにより特定の被写体を検出し、その被写体にとって最適なポイントにピントを合わせ追尾する

という。

昨今、人工知能の画像認識能力が非常に高くなっている。ニュースリリース5頁には、

モータースポーツ、航空機、鉄道の 3 つのジャンルの被写体を検出し、最適なポイントにフォーカスし、 追尾します。例えばモータースポーツであればドライバーのヘルメットにピンポイントでフォーカスしてゆく など自動で被写体を検出するため、オートフォーカス精度の向上はもちろん、構図に集中して撮影することができます

と書かれている。高速で動く被写体にピントを合わせ続けることは、カメラの高性能化が進んだ今でも、難しいものである。一眼レフと違い、もともとオートフォーカスの測距可能エリアが広いミラーレス一眼に、深層学習技術を活用することで、ピントが外れる可能性を極限まで抑える意向がうかがえる。

また、オリンパスは同日、35mmフルサイズ換算で300-1000mm相当をカバーする、驚愕の超望遠ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO」も発表した。このレンズはまだ開発中であり、発売予定時期は2020年。2月28日からパシフィコ横浜で開催される展示会「CP+」にデザインモックアップが参考出品される。

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO(プレスリリースより:編集部)

レンズのコンセプトとしては、キヤノンが2013年に発売したフルサイズ一眼レフ用「EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×」に似ているが、マイクロフォーサーズ規格なので、小型軽量に仕上がりそうだ。来年発売するレンズの開発をこの段階で発表するということは、フルサイズミラーレス一眼を出さないオリンパスからの牽制なのだろう。

オリンパスが深層学習技術を活用した機能をカメラに組み込むのは画期的であり、今後は他社も追随するのではないだろうか? 競争がますます激化するカメラ市場から目が離せない。

長井 利尚(ながい としひさ)写真家
1976年群馬県高崎市生まれ。法政大学卒業後、民間企業で取締役を務める。1987年から本格的に鉄道写真撮影を開始。以後、「鉄道ダイヤ情報」「Rail Magazine」などの鉄道誌に作品が掲載される。TN Photo Office