ダイヤモンド・オンラインに昨年10月、「起業したがる若者を本物かどうか見分ける4つの質問」という記事がありました。
筆者曰く、その質問とは、①何をするのか、明確になっているか/②事業のアイディアがあるとすれば、その事業のビジョンは何か/③その事業は、どうやって人々を幸せにするのか/④そのビジョンに向かって、何もかも投げ出してでも突き進むというパッションはあるか、だとしています。
此の筆者の下には相談に来る若者が絶えないようですが、冒頭の質問云々以前の話として私は、そもそも「起業したいのですが…」と誰かに相談する人は、一刻も早く起業を止めた方が良いと思います。何故なら人に相談して決まるような覚悟で以て、新しく事業を始め成功を収めることなど出来るものではないからです。
「世のため人のためになる事業を何としてもやりたい」「この事業で俺は社会にこれだけ貢献できるんだ、いや、貢献したいんだ!」といった止むに止まれぬ気持ちがあり、夢を膨らませ夢を抱き続けられる人こそ起業したら良いと思います。
私のところに相談に来る人に対しては、上記のように話をしています。勿論、業をスタートした上で「中々上手く行かないのですが、どうしたら良いでしょうか?」「自分のやり方は、何か間違っているのでしょうか?」等々の相談であれば、私は出来る限り乗ってあげるようにしていますが。
私自身はと言うと49歳の時、インターネットを活用した金融事業によって投資家主権あるいは消費者主権を確立し、金融サービスの顧客便益性を高め、社会に貢献することが自らの天命の一つではないかと思えるようになり、起業を果たしました。
また、当時もう一つの天命として認識したことは、事業を通じて得た利益を社会に還元すべく、公益財団法人SBI子ども希望財団やSBI大学院大学、社会福祉法人慈徳院を設立し、直接的な社会貢献をすることでした。孔子ではありませんが、次世代を担う人物の育成こそが社会に対する最大の貢献になると考えたのです。
人間は社会的な動物であり、周りによって生かされています。そういう人間として生まれてきた以上、何か社会で果たすべき役割があるはずです。その役割が「天命」というものです。我々にとって天命を知ることは、生きる目的を知ることだと言っても過言ではないでしょう。
最後にもう一つだけ、世のため人のためと大志を有し起業する人、あるいは起業した人に伝えたいのは、棺桶に入るまで学を磨き続けねばならないということです。「知識の欠如」「実行力の欠如」「戦略の欠如」という『「三無」の先に成功なし』(15年3月16日)とは当ブログで幾度も指摘してきた通り、成功する上で専門的な知識等が必要になるのは言うまでもありません。
しかし、何よりも大事なのは人間学を修めることによって自らの身を修め、そして人間的魅力を高めて行くことではないかと思います。曾子(そうし)が「任重くして道遠し」(『論語』)と述べているように、人道を極めて多くの人を感化し、そして此の社会をより良くして行く任というのは本当に重いものであります。
BLOG:北尾吉孝日記
Twitter:北尾吉孝 (@yoshitaka_kitao)
facebook:北尾吉孝(SBIホールディングス)