「ヘッジファンド」なのにヘッジにならない「リーマン後」の金融市場

ヘッジファンド業界が転換期を迎えていると日本経済新聞が伝えています(図表も同紙から)。

全世界で約350兆円を運用し、1万本あるといわれるヘッジファンドですが、リーマンショック以降はファンド数も横ばいで、運用残高は遂に減少に転じました。その理由は、運用成績の低迷です。

ヘッジファンドという言葉の通り、相場が下落する際にも空売りを組み合わせて損失をヘッジすることで、相場の方向性に関わらず絶対的収益を上げるというのがウリでした。しかし、リーマンショック後の10年間、ヘッジファンドの平均リターンはアメリカ株のインデックスであるS&P500を下回り続けています。

しかも、ヘッジファンドは高コストです。預かり資産の2%のマネジメントフィー(投資信託の信託報酬に当たるもの)と成功報酬として利益の20%というのが標準的なフィー体系です。インデックスファンドの方がパフォーマンスも良く、コストも圧倒的に低いのですから、勝ち目はありません。

もちろんヘッジファンドの全てがダメな訳ではなく、引き続き高い運用成績を誇るファンドも存在します。しかし、その数はあまり多くなく、事前にどのファンドが良いパフォーマンスなのかを知ることは、株式の銘柄選択以上に難しいと言えます。しかも、人気のファンドは一般の投資家には門戸を開いておらず、好成績のファンドほど、個人投資家がアクセスしにくい状態なのです。

市場の平均値を上回るリターンを追求するアクティブ運用は全体として、市場の平均値であるインデックスに勝てない。そして、インデックスを上回るものは「事後的」にしかわからない。

ヘッジファンドの凋落は、そんな金融市場では当たり前のことが、ようやくマーケットの縮小という形で表面化したに過ぎないとも言えます。

私は一貫して、金融資産の運用はインデックスファンドを使って積立をするのが大原則と提唱し続けてきました。自分自身の資産運用も金融資産は国内外の株式のインデックスファンドの積立を継続しています。自動積立なので、何もしないで資産が構築されていきます。

アクティブな債券運用で知られ「債券王」の異名を持つ投資家ビル・グロス氏も自らが運用するファンドの運用成績の不振から引退に追い込まれたと報じられています。アクティブ運用で成果を出し続けられるのは、ウォーレン・バフェット氏などごく少数の「例外」だけです。

そのウォーレン・バフェット氏さえも、推奨する運用方法はアメリカ株のインデックスファンドと明言しています。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年2月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。