欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は7日、イタリアやドイツをはじめ域内主要国の経済成長率予想を軒並み下方修正した。今年のユーロ圏経済の成長率を1.3%の予想とし、昨年11月時点の1.9%の予想から下方修正した。また、2020年の成長率予想も1.6%と従来の1.7%から下方修正された(ブルームバーグの記事より)。
イタリアでの政治上の問題やそれに絡んでの財政悪化、フランスではデモ隊による抗議運動が続いている。ここにきて今度はイタリアとフランスの関係が悪化しつつある。ドイツでは自動車産業が規制変更により回復が遅れているとされている。また米中の貿易摩擦も絡んでの中国の景気減速など外部要因による影響も出ているとみられる。
欧州委員会は今年のユーロ圏のインフレ見通しも1.4%と従来の1.8%から引き下げた。欧州の中央銀行のECBは、夏以降の利上げの可能性を探っていたとみられるが、ユーロ圏の経済・物価動向が改善しない限り、年内の利上げは難しい。FRBの利上げ停止観測なども影響を与えそうである。
7日に英国の中央銀行であるイングランド銀行は、金融政策を決めるMPCで政策金利を年0.75%で据え置くことを決定した。同時に公表した四半期インフレ報告では、2019~20年の経済成長見通しを下方修正した。
英国ではEU離脱の行方が不透明となっていることで、これも英国経済の足かせとなっており、欧州の景気動向にも影響を与えているようである。
これまで米国を中心として、ほどよい景気回復が続き、株式市場も景気が過熱も冷え込みもしない適度な状況にあるゴルディロックス相場と呼ばれる状態が続いていた。それが昨年あたりから変調を来すようになってきた。
米中の貿易摩擦が中国の景気をさらに悪化させ、それが米国や欧州にも跳ね返ってきた。英国やフランス、イタリアでは国内で問題を抱えていたが、それがあらためて表面化してきた。ドイツもすでに盤石とはいえない。
今後は世界的な景気の低迷が意識されるとみられ、株式市場では急落はなくても、反ゴルディロックス相場のような状況になる可能性がある。これは当然ながらも日本経済にも影響を与えるものと思われる。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2019年2月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。