こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
議会閉会後の各会派ぶら下がり記者会見でそれぞれが主張をある程度ぶちまけ、報道も一通り出揃ったようですので、私の視点からも都議会空転→決着の顛末を総括しておきたいと思います。
築地跡地で都議会紛糾 小池氏「変心」 説明なく国際会議場構想(毎日新聞)
まず結論から申し上げますと、小池知事が3月4日の経済港湾委員会に出席し、一問一答での質疑が行われることになりました。
まだ質問時間などで難しい調整が残っているものの、知事による説明・委員会質疑を求めていた野党6会派にとっては「完勝」と言って良い結果だと思います。
実のところ、野党6会派の足並みが揃ったとはいえ、当初は小池知事の参考人招致は極めて困難と見られていました。
表向きは「是々非々」と言っている公明党も、早々に「知事招致は必要ない」と表明。「小池知事のイエスマン」である都民ファーストの会とがっちりタッグを組んで、議会・委員会運営による多数派をばっちり確保したからです。
最強硬派の私自身でさえ、「勝ち取れたとして、合同審査会の開催までか…」とほんのり考えていたくらいです。
ところが、ここからが単純な「数」では決まらない議会制民主主義の奥深いところで、事態は思わぬ展開へ。
財政委員会における激しい攻防・行き詰まる駆け引きの末、利害関係の一致した盤石タッグかと思われていた都民ファ・公明党が決裂。知事与党2会派が本会議前の理事会を欠席するという異例の事態に突入し、本会議は完全にスタックしました。
これは「本会議にも理事会にも出ない!」と主張する公明党を説得するため、足並みを揃えたフリを見せざるを得ない都民ファまで巻き込まれて欠席したものと考えらます。
そして議会運営に一義的な責任を持つ第一会派・都民ファーストの会は、この状態を打開するために大幅な譲歩を強いられることになります。
本会議への出席を拒む公明党を説得すると同時に、他の野党6会派とも折衝しなければならない。この二正面作戦を乗り切る力は都民ファにはすでになく、まず野党案をほぼ「丸呑み」。
公明党がどういった条件で本会議出席を承諾したのかは不明ですが、事実上、小池知事が事態収集に乗り出していることから、おそらく今後の代表質問・一般質問などで公明党の政策提案には、今まで以上に満額回答が連発されることが予想されます。
もしそうだとすれば、火が吹いた議会運営を鎮静するために、都民の税金が投下されることになるんですけどね…。
いずれにせよこうして、当初はありえないと思われていた「小池知事の参考人招致」が実現するに至ったわけですね。
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ここでおそらく傍から見ていてもっともわかりづらいのは、「なぜ都民ファと公明党が決裂したのか?」という部分ではないでしょうか。
公明党幹事長は、繰り返し「都民ファが信義則違反を犯した」と強く批判しています。
こうした事態を招いたのはやはり、都民ファ執行部の二転三転・右往左往した挙げ句、身内のハシゴまで外した意思決定態度でしょう。
財政委員会の攻防4日目(本会議全日の19日)夜、財政委員たちの現場レベルでは「補正予算案を除いたところまで審議を進める」という妥協案で、自民党まで含めて一致していました。
ここまで辿り着いたのは、粘り強く各会派と交渉を重ねた委員たちの努力に他ならず、党派を超えた謎の信頼関係なども醸成されるに至りました。
共産党の池川都議、めっちゃナイスガイでしたしね。共産主義でさえなければいいのに。
閑話休題。
しかしながら、あとは委員長会派である公明党上層部の最終決断というところで、またも停滞。
0時流会は刻々と迫っていましたが、交渉現場にいる委員たちとしてはこれ以外の対応案はない、これで決まらないなら明日以降に延長やむなしとなっていました。
その状態で突如、23時40分頃でしょうか。委員たちが集まっていた会議室に都民ファ執行部が乱入。「日またぎをするから!早く!!」と、強引な雰囲気で委員長を連れて走り去っていきました。
※日またぎ
0時になると委員会が流会してしまうため、日をまたいで委員会を継続する決定を行うこと。当然のことながら議会慣習としては、全会一致・全会派出席の元で行われる
「ここまで積み上げてきたものをすべて壊すのか!」
「二度と信頼関係は戻らないぞ!!」
と強く抗議をしましたし、都民ファ委員も含めて全員がハシゴを外された格好です。飛び交う怒声、呆然と佇む都民ファ委員。現場は壮絶でした。
ではそこまでやったのだから、都民ファ・公明党の2会派で日またぎだけでなく最後まで委員会運営を進めるのかと思いきや、そんなこともなく。
都民ファが最後までの進行は拒む中途半端な対応を決定し、ここで公明党との亀裂が決定的なものになったわけですね。
2時まで都民ファの決断・交渉決裂を待った挙げ句、この日の財政委員会は解散となり、極めて不機嫌な公明党幹事長がたまたま廊下で会ったやながせ都議に罵声を浴びせて帰っていくというオマケの珍事件まで発生しました(苦笑)。
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公明党から見れば、2会派で日またぎを決議したのだから当然、その2会派でそのまま最後まで議事進行をすると思ったのでしょう。
全会派の合意を得ずに日またぎまでするという「禁じ手」を繰り出した以上、最後までできなければ委員長会派の重大な責任問題になります。
しかし、都民ファ側は議事進行までは拒否しました。冒頭の毎日新聞によれば、
若手が難色を示したため都民ファーストが「強硬路線」を取り下げ、公明は「信義則を破った」と反発した。
とありますから、突っ走った「日またぎ」後に、現場で交渉に当たっていた委員から強い異論が出されたのでしょう。
現場が取りまとめた方針を無視し、幹部同士だけで勝手に突っ走ったのだから、委員が反発するのは当然のことです。
当然のことなんですが、ここでその反発を受け入れる都民ファ執行部の決断もよくわかりません。そんな当たり前の事態を想定せずに、どうして公明党と突っ走ることを約束してしまったのでしょうか?
「公明党との約束・信頼は裏切れない。日またぎを決断した以上、ここは最後までいく」
というのが筋の通った態度であり、この前言撤回は完全な迷走であると言えます。
強硬路線を取らないなら、都民ファは日またぎをしないで翌日に持ち越す方向で公明党を強く説得するべき(公明党の日またぎ要求を断るべき)でした。
そしてそれこそが「正解ルート」だったはずだと、振り返ってみても強く思います。
一連の結果を見れば、都民ファ上層部は公明党幹部に強く押されて現場の意見を無視し、次に現場から強く抗議されれば今度は公明党の約束を破ったりと、文字通り優柔不断、支離滅裂、不誠実な対応に終始していたと言えます。
今回の一連の財政委員会戦争・本会議の停滞は、もちろん財政委員長会派である公明党に重い責任がありますが、第一会派がこの体たらくでは、色々な関係が破綻するのも当然だなという感じです。
議事運営には協力的だった私や共産党会派も何度も裏切られましたし、議長案でまとまったものの、第一会派および議会運営委員長に対する信頼は現時点でもゼロ以下のままです。
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長くなりましたが、まあ本当に思うところが色々とあった5日間でした。終わったみたいな言い方しましたけど、これが始まりなんですよね…今定例会はここから何が起こるのか。。
与党内の亀裂・衝突により、知事招致という完勝をもぎ取った野党6党。
都民ファに対する優位をさらに確固たるものとし、(おそらく)知事からバーターを得た公明党。
一方で。
「知事を守る」という最終防衛ラインを突破され、すべての会派との信頼関係が破綻した都民ファ。
強い世論の後押しがあったわけでもない状態で、ここまで最大会派が「ひとり負け」する状況は聞いたこともありませんが、自身でまいた不信の種は回収されることもなく、まだそこかしこに火種が燻っています。
我々としては、いかなる理由があれ議会の空転によって浪費した関係者の時間や労力に対して心から申し訳なく思うとともに、勝ち得た「知事との一問一答質疑」という機会を最大限に活かせるよう、各会派と協力して努力していきたいと思います(経済港湾委員会に議席をもってないので…)。
また、最大会派であり議会運営委員長を擁する都民ファーストの会に対しては、くれぐれも自らが本会議前の理事会に欠席するなどという失態を二度と繰り返さぬよう(この理由はいまだ明確に説明されていない)、これ以上の議事停滞を招かぬよう、信頼を取り戻す努力を強く要望致します。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は、あたらしい党代表、東京都議会議員、音喜多駿氏(北区選出)のブログ2019年2月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。