金正恩は予測不能のトランプに恐れおののいている --- 古森 義久

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

第2回目の米朝首脳会談が2月27、28の両日、ベトナムの首都ハノイで開かれる。この会談では何が合意されるのか。米国のトランプ政権はどんな政策でこの会談に臨み、最大目標である北朝鮮の完全な非核化をどう進めるのか。北朝鮮の朝鮮労働党の金正恩委員長はどう対応するのか。

この一連の疑問について、トランプ政権の中枢で最近まで北朝鮮非核化に関与してきたフレッド・フライツ前大統領補佐官(現「安全保障政策センター」所長)にインタビューした。米国では米朝問題に関して多くの専門家たちが多様な報告や論評を発表しているが、トランプ政権の内側にいた人物の見解表明は珍しい。

フレッド・フライツ氏は米国歴代政権の中央情報局(CIA)やNSCで、北朝鮮やイランなどの秘密の核開発阻止を中心とする大量破壊兵器の拡散防止を専門としてきた。2018年5月にトランプ大統領の補佐官となり、大統領直属の国家安全保障会議(NSC)で首席のボルトン補佐官に次ぐ次席となった。同年11月には民間の「安全保障政策センター」の所長に就任するため、政権を離れた。著書に『迫りくる北朝鮮の核の悪夢』などがある。

インタビューでフライツ氏は、トランプ大統領が一貫して北朝鮮の核兵器の完全廃棄を目指していることと、米側の要求の一部を軟化させることで金正恩委員長から北朝鮮側の核とミサイル施設への査察の合意を取りつけられるだろうという見通しを強調した。

フライツ氏はトランプ政権の基本姿勢について、「核武装した北朝鮮は絶対に許容しない。北朝鮮の防衛には核兵器も長距離弾道ミサイルも不要な攻撃用兵器であり、国際社会にとっても受け入れ難い」と述べ、北の完全非核化実現策が揺らいでいないことを力説した。そのうえで、トランプ大統領が今回の首脳会談で、北朝鮮の完全非核化に向かってかなり実質的な前進を果たすだろうと総括した。

インタビューは2月21日、ワシントンのホワイトハウスに近い安全保障政策センターの所長室で行った。以下、その内容の骨子をお届けする。

譲歩を重ねてきた米国政権

──今回の米朝首脳会談では、まずどんな成果を期待しますか。

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