こんにちは、広島市政を目指して安佐南区から挑戦予定のむくぎ太一(椋木太一)です。
「札仙広福」政令市比較―広島市の将来像を展望する―の最終回です。前の2回では、広島市と「地方都市最強」の福岡市をハード、ソフト両面から比較し、広島市の課題などをあぶり出してきました。両市を比較すると、広島市はまず、空港や道路網といった交通インフラの整備、行政の発信力の強化に取り組むことがポイントになりそうです。
交通インフラは地道ですが、整備を着実に進めることしかありません。「ローマは1日にしてならず」と同じです。広島市全体を俯瞰した整備が必要になってきますから、大規模な整備は10年、20年スパンでとらえなければなりません。
具体的に必要なのは、
①アストラムラインの環状化ならびに、広島駅との連結
②都市高速道路の環状化、連結
③広島市から広島空港へのアクセス線の確保
この3つは、ぜひとも、私たちの世代で解決しなければならないことだと思います。①、②は一部は計画にも入っているので具体化は見込めます。最大の懸案は、③の空港アクセス線の確保なのです。報道によると、広島県やJR西日本は広島空港へのアクセス線の建設をほぼ断念している状態といいます。山陽道にバスレーンを作ることでリムジンバスの延着を減らすなどの代替策も出ているようです。
イケイケの福岡市との差は空港の立地にあるとみている私としては、どうも中途半端で付け焼刃に見えて仕方ありません。より抜本的な打開策が必要なのです。さらに先日、熊本では第三セクターが中心となって熊本空港へ直通のアクセス線を建設する方向だとという報道がありました。そもそも、広島市内に空港がない状態ですから、ますます、他の政令市に差を付けられてしまうのではないかと懸念してしまいます。
次に行政の発信力の向上について、私、椋木は広島市政改革の一環として、これまでの広報機能とともに広島市のブランド力を向上させる組織を作ることを提案します。「平和都市」であること、世界的遺産を抱える観光地であることを軸に、「広島市ブランド」を国内外にこれまで以上に発信していくことが求められているからです。
どうしてここまで、広島市の「地位向上」にこだわるかと言いますと、これから激化するであろう都市間競争に勝ち残ることをにらんでのことだからです。
そもそも、都市間競争とはなにか?端的に言えば、人口減少社会において都市間で住民の流出・流入が起こることです。企業間では競争は当たり前です。企業間競争においては、各々の企業の特性を最大限に生かすことが、その業界における優位性を生み出す要因の一つに挙げられます。いわば、その企業のウリ、アイデンティティーといったところでしょうか。
例えば、私がかつて働いていたマスコミ業界であれば「〇〇新聞社は事件事故(警察関係)に強い」とか「△△出版は少年漫画に強い」などです。これは、都市間競争でも同様だと思います。「〇〇市は子育て支援が充実している」「△△町は治安がいい」「××区は交通の便がいい」といった理由で、近隣都市から顧客である住民が流入してくる(流出していく)のです。
九州において、福岡市は流入超過となっています。「一強」とも言っていいでしょう。出張や転勤で福岡市に在住経験のある人たちがそのまま移住したり、起業のしやすさなどから若者が九州各地や大都市圏から流入しているのです。人口減少やITC化が進み、社会構造が変化していけば、都市間競争は今まで以上に激烈になっていくものと思われます。
広島市は現在、福岡市ほどの求心力はありません。ですから、広島県、中国地方、ひいては西日本において、少なくとも大阪市に次ぐポジションを狙うぐらいの意気込みでいないと、この都市間競争の憂き目に遭うかもしれないと言いたいのです。
現状として、広島市は「札仙広福」を含めた政令市の中でやや埋没感が否めません。ところが、唯一の被爆国の中の被爆地(「平和都市」)としての情報発信力、世界的遺産を抱える優位性など、福岡市や他の政令市にはない特性があります。このことが、都市間競争に勝ち抜く秘訣となっていくのです。
さらに、これまで見た要素を補強していくことも、広島市の「基礎体力」を向上させることにつながってきます。平和都市、交通インフラの向上、発信力の向上による広島市ブランドの確立――。広島市の将来を見据える上で、重要なキーワードになっていくのです。
(連載終わり)
むくぎ(椋木)太一 ジャーナリスト、元読売新聞記者
1975年、広島市生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務などを経て2006年、読売新聞西部本社に入社。運動部記者時代はソフトバンクホークスを担当し、社会部では福岡市政などを取材した。2018年8月に退職し、フリーランスに。2019年4月の広島市議選(安佐南区)に立候補予定。公式サイト。ツイッター@mukugi_taichi1