築地跡地計画を巡る都議会の追及で窮地に陥ったように見えた小池知事だが、ここで最強の反撃カードを出してきたようだ。都議会が終わった直後に、自民党の二階幹事長と会談。来年の都知事選出馬に向けた「全面協力」を取り付けてきた。今頃、小池知事と早川さんの高笑いが聞こえてきそうだ。
来年の都知事選 小池知事立候補なら全面協力 自民 二階幹事長 | NHKニュース
これでは、すでに維新の柳ヶ瀬都議が挑発的に指摘しているように、築地問題で小池知事を追い落としにかかったはずの都議会自民党は、まさに後ろから弾を撃たれた格好だ。
なぜ維新はダメで、小池はOKなのか?
維新に行くかはともかく(苦笑)、後ろからの発砲なのは確かだ。いや、党本部の幹事長から撃たれたとなれば、地方組織にとっては拳銃の弾どころかバズーカ砲をぶち込まれたような侮辱的な裏切り行為だ。
報道によれば、二階幹事長は「小池知事が立候補すれば、全面的に協力するのは当たり前だ。実績は、見て分かるのではないか」と、さも既定路線と言わんばかりだったようだ。もちろん、真に「実績」があるのであれば、それで良いのだろうが、市場問題でいたずらに混乱を長引かせ、五輪オペレーションにも懸念が持たれている小池都政の何が良いのか、都民としては幹事長に説明責任をはたしていただきたいものだ。
もう一つ、二階幹事長の判断が「ご都合主義」に見えてしまうのは、大阪との対応の違いだ。同じ日に幹事長の発言として、ダブル選挙の意思を固めた大阪府の松井知事、大阪市の吉村市長に対して、「思い上がっている」などと激しく批判した。
自民 二階幹事長 大阪府知事ら思い上がっているのでは | NHKニュース
維新の大阪統治を必ずしも支持・肯定するわけではないが、少なくとも、市場移転問題で5000億円の血税を浪費しようとしている小池都政のような規模での「実害」は出していない。なぜ維新がダメで、都民ファーストの小池はOKなのか。自民党として府政も都政も取り戻しに行きたいのであれば、両方ダメだというのが筋なのではないか。
税源移譲も合わせて都民の損失は最大で1.5兆円
天下の自民党幹事長とは言え、和歌山県選出の傘寿の政治家に東京の未来を決められようとしている違和感しか残らない。5000億円といえば、昨年末、自民税調の方針で東京から地方に移転する法人関連収入がさらに5000億円を積み増されたばかり。他の再配分措置を含め、8000〜1兆円の税金がむしり取られた上に、5000億円の実害を与える知事まで押し付けられるとなれば、都民は二階幹事長によって合わせて最悪の場合、1兆5000億円の損を強いられることになる。
こうなったら自民都連の対応が問われるところだ。都知事選で党本部と都連が正面から戦った歴史はある。1991年の選挙では、小沢一郎幹事長の党本部が、当時の鈴木俊一知事ではなく、元NHKキャスターの磯村尚徳氏を推薦。これに鯨岡兵輔氏、粕谷茂氏らが反発し、鈴木知事を押したてて圧勝した。(詳しくは「都知事選連載②都知事選が狂った“元凶”は小沢一郎だ 」をご参照)
ただし、当時と異なるのは衆院が中選挙区制で党本部と地方のパワーバランスがもう少し取れていた。今は小選挙区制だから都連所属の衆議院議員は党本部に公認されるかどうか死命に関わる。
そしてなによりも二階幹事長のこの指摘は正鵠を射ている。
小池知事に勝てる自民党の候補者がいるのか。政治は厳しいもので、有名だから当選するだろうなどというのはダメだ。
何度か書いているが、都連自体も都政で「下野」したのに、都民に変わったと受け止められているか。国政の自民が下野した当時と同じように率直な反省とゼロベースからの戦略見直しが必要だと以前指摘した。
先述の税源移譲といい、あるいは大学入学者の23区規制といい、東京の首を締める政策に、都連関係者で反対の声があったとの報道は見かけない。そうした政策的スタンス、そして候補者選定も含めて、都民に支持され、二階幹事長を見返せるかどうか問われている。
それはともかく、すでに二階幹事長の判断に疑念の声は噴出し始めている。
いや、それ以上に、二階発言を受けた対応が問われているのは東京都民だ。このまま「1.5兆円」の損失をだす、二階幹事長プロデュースによる小池都政継続でいいのか。メディア的に盛り上がるかどうかとは別に「筋論」としてはそういうことではないのか。
おしらせ:「小池都政迷走」の原稿を募集中です
アゴラでは、2019年3月、「小池都政迷走」をテーマに皆様のご意見を募集中です。都議会空転の原因となった市場問題への対応など、小池知事の政治手法そのものへの評価はもちろんのこと、都議会議員の対応、さらには小池ブームを主導したマスコミの都政報道や、小池氏を選んだ都民の判断などについて、みなさまの忌憚のないお考えをお尋ねします。東京以外の地域の皆様のご意見も歓迎です。
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