東日本大震災から8年を迎えた11日、今年も新聞、テレビで震災関連の報道が盛んだ。報道各社はこの節目の日に合わせ、被災地の関係者を取材するが、宮城県女川町の創業70余年の老舗かまぼこ屋がツイッターで「毎年2-3月はたくさん取材依頼が来るが、今年は8割以上お断りした」と投稿し、その理由がネット上の注目を集めている。
発信をしているのは「蒲鉾本舗高政」。同社のサイトによると、創業は1937年で従業員は195人(2014年4月時点)。かまぼこの生産から販売までを手がけ、商品は県の品評会で水産庁長官賞や県知事賞を多数受賞してきた名店だ。
アゴラで岩瀬大輔氏が7年前に紹介しているように、震災直後の女川町に物資が届かず、町民は食べるものも不足していた中で、冷凍庫にあった2万個のかまぼこを無料配布し、人々の命を救ったことが話題になった。
過去に話題になった被災地の住民や事業者は、「震災から◯年」の節目に合わせた取材のオファーが集中しやすいが、同社のツイッターは9日、そうした取材について「まだまだ道半ば系、震災を忘れないで系、困ってます系、こんなはずでは系。」といった紋切り型になっていることを指摘。「女川で私はそう思って無いです。取材受けてもいいけど、勝手な構成にしないでね。ナレーションでどうにかするのも無」(原文ママ)と報道各社に要望したところ、取材を断念するところが多かったと明らかにした。
さらには翌10日には、
震災を忘れない系番組」もいいんですが、それを見て「忘れない!」と思った方、制作スタッフ・出演者の方、自分に災害が訪れる時の準備はもちろんしましたよね?
メディアを見て「忘れない」いうだけでは、ドラマや映画の感想と同じ。僕らに起きた事はリアル。食べて応援、被災地にお金を落とす、ありがたいがまずは「自分ならどうする」のか考えてほしい。
「忘れない」よりも、災害の教訓とそれがシステム構築やインフラ整備に繋がっているか、その検証をしませんか?忘れない系より100倍大切ですよ。
などと報道機関に注文をつけるツイートを次々と行った。
これにはネット民からも「震災は忘れてはいけないし、完全に復興してるとは言い難いのですが、関心無い人には完全にヒトゴトになってますからね」「マスコミは感動ポルノを作りたい意識がまずある」「もう皆前を向いてるのに」などと共感を示す人が続出していた。
震災から年月が経つにつれ「定番化」や「マンネリ化」にとらわれ、本当に被災地の為になっているのか、報道のあり方も見直しが迫られているようだ。