人気バンド「電気グルーヴ」メンバーのピエール瀧容疑者(51歳)が13日未明にコカイン使用容疑で逮捕されたことを受けて、同ユニットが所属するソニー・ミュージックレーベルズは同日にCDなどの出荷停止、在庫回収、デジタル配信停止を発表していたが、その後ネット上では、Apple Musicでダウンロードした曲も聴けなくなったことが報告されるなど、波紋がさらに広がっている。
m-floの☆Taku Takahashi氏が主宰する音楽カルチャーメディア「block.fm」の14日の記事によれば、電気グルーヴの作品は14日午前9時の時点ではまだiTunesストアで購入可能な状況であり、「20位圏内の7作品が電気グルーヴ作品」になっていたという。
だがそれ以降、ツイッター上では「iTunesストアからも電気グルーヴが消えた」という報告が続出。
「ダウンロード済みの曲も聴けなくなった」という悲鳴も上がり、
「購入したCDの強制没収と同じでは?」と問題視する声が出てきたが、
理解不能。 数ヶ月前からDLしてあった電気グルーヴの曲が視聴不能。これはCDを購入した人から強制的に没収するのと同等の行為では?それが正義なのか?お前らの正義なのか?間違ってるよ、この社会も何も。
実際のところ、「購入した曲」はその後も視聴可能だったようだ。
いずれにせよ、今回の件でCDを再評価する動きが一部で出てきており、
メルカリでは電気グルーヴのCDの値段が高騰している模様。
こうして波紋を広げた出荷停止・在庫回収・配信停止に対し、所属レーベルに撤回を求める署名も「change.org」で15日に始まっている。発起人である社会学者の永田夏来氏と音楽研究家のかがりはるき氏は、今回の署名募集開始について、
排除や厳罰はむしろ逆効果であり、本人を受け入れる場所が用意されていることが回復の手助けになるという前提は広く共有されるべき
既にCDが高額転売されている現状を踏まえると、音源・映像の出荷停止、在庫回収、配信停止は誰のためにもならない安易な方策なのではないでしょうか
たくさんの人が関わる映画やドラマとは違い、音楽やPVは比較的身軽に意思決定できる可能性があります
サービスに正当な対価を払って聴いてきた人から突然音楽を奪い去ってしまう対応にも(もし一時的なものだとしても)大きな疑問があります
過度な自粛・作品の封印といった「前例」自体を変えたい」
などと説明。これにはツイッター上でも「やっと出た。大賛成。」「署名したろ!」と反響が大きく、16日18時現在で、目標の「できれば3万人以上」に対して20,870人の署名が集まっている。
上記の「逆効果」という点については、依存症問題の専門家である田中紀子さんがアゴラでも社会的理解を求め続けている。13日のエントリー「被害なき犯罪で作品の懲罰的お蔵入りはやめて」では、
薬物の自己使用の場合は「被害者なき犯罪」
逮捕されることで、十分社会的制裁は受ける
その上「こんなに迷惑をかけやがって!」と、迷惑の度合いを、どんどん強められ、2次3次の懲罰を与えられると、ますます自暴自棄になっていってしまい、回復をつかむ勇気が阻害されていきます
と指摘し、フェイスブックに1,300以上のいいね!がついた。
また「ドラマと音楽購入の違い」は、弁護士で元大阪府知事の橋下徹氏による問題提起に近いとみることができるかもしれない。橋下氏はAbemaTIMESの中で、
法律上の罰を受けるんだから、それでいい、という考え方もあるけれど…社会的制裁はやむを得ないと思う
テレビは流れてくるものだから、厳しいかもしれないけれど(放送自粛は)仕方がないのではないか
映画は観客がお金を払って観るものだし、選択肢として残してあげてもいいと思う
と見解を示していた。
なお、ハフポストによれば、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は過剰な自粛が進まないための「ガイドラインを作るべき」と提言しているようで、今回のApple MusicのDL曲視聴停止騒ぎも受け、薬物依存者の出演作品の自主規制をめぐる議論はまだまだ続きそうだ。