現状では日銀の金融政策の変更は困難、副作用が顕在化する前に修正も必要に

1月22、23日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨が20日に公表された。今回はこのなかの「当面の金融政策運営に関する議論を確認してみたい。

『一人の委員は、「現在の金融緩和を粘り強く続ける」という情報発信は、日本銀行の緩和的な政策スタンスを示すうえで重要であるが、同時に、金融市場において、当面は政策変更がないという予想が過度に固定化されてしまうことを防ぐ工夫も必要であると指摘した。』

日本銀行(写真AC:編集部)

政策変更がないという予想が過度に固定化されてしまう理由は、物価目標が達成される見込みはないものの、その目標を下ろすようなことはしたくない。そうであれば、過度の金融緩和を続けるほかはない。さらに追加緩和を模索するにしても、数字上は量を増やすなり、金利を下げることは可能ながら、現実的には量を増やすにも、金利を引き下げるにもすでに限界に近い。副作用を考慮すると動くに動けないというのが現実と思われる。そうなると「工夫」に頼らざるを得ないということであろうか。

『別のある委員は、物価安定目標への到達が遠ざかっている現状を踏まえると、何か大きな危機が起きるまでは行動しないという態度は望ましくなく、むしろ、状況の変化に対しては、追加緩和を含めて迅速、柔軟かつ断固たる対応を取る姿勢を強調するとともに、一部で指摘されている緩和限界論に反論していく必要があると述べた。』

異次元緩和と呼ばれるように、当初からやり過ぎていたものをさらに強化した上で、それでも効果なく、量から金利に戻してマイナス化したことで、金融機関の経営を圧迫させ、金融そのものに悪影響を与えている可能性がある。そのなかでどのような追加緩和手段があるというのか。その追加緩和手段があったとして、金融市場の動揺を一時的に抑えられたとしても、物価目標達成にどれだけ寄与できるというのか具体的に示してほしい。まずは物価目標を柔軟化させて、金融政策そのものもフレキシブルなものに戻すことが必要なのではなかろうか。

『これに対し、ある委員は、不確実性の高い状況のもとで急いで政策を変更することは、かえって金融不均衡の蓄積や実体経済の振幅拡大に繋がるリスクもあるため、十分に情報を収集・分析したうえで、その時々の状況に応じて適切に対応していくことが大事であるとの認識を示した。』

このあたりが冷静な判断といえるであろう。なにも緩和すればすべて良しというものではない。

「この間、複数の委員は、海外経済の下振れリスクが顕在化し、経済・物価情勢が大きく悪化するような場合には、政府との政策連携も一段と重要になるとの見解を述べた。」

それとなく金融政策から財政政策に比重を移したらどうかとも読めなくもない。しかし、財政政策も効果うんぬん以前に、膨大な債務を抱えている以上、信認毀損にも繋がりかねないことで、慎重に行う必要はある。まさかとは思うが、MMT(Modern Monetary Theory、現代金融理論)と呼ばれる理論が持ち出されるようなことはないと思いたいが。

金融緩和の効果についての議論では、多くの委員は、今後とも、強力な金融政策を続けていくためには、政策の効果と副作用をバランスよく考慮していくことが重要であるが、現時点では、金融緩和の効果が副作用を上回っているという認識を示したとある。

副作用はじわりじわりと広がってきている。それが顕著に現れたときには取り返しがつかなくなる恐れがある。もし金融緩和の効果が副作用を上回っているという認識であるのであれば、いまのうちに修正を施して、危機を未然に防ぐことも必要なのではなかろうか。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2019年3月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。