【GEPR】鳩山由紀夫氏の体内にもある「トリチウム水」

池田 信夫

鳩山元首相が、また放射能デマを流している。こういうトリチウムについての初歩的な誤解が事故処理の障害になっているので、今さらいうまでもないが訂正しておく。

トリチウムは水素の放射性同位体で微弱なベータ線を出すが、これは水の中に一定の濃度で含まれているので、自然界にも存在する。トリチウムを含む水を「トリチウム水」と呼ぶなら、それは鳩山氏の体内にもあるのだ。

トリチウムの生物への影響(経産省の資料)

鳩山氏の書いているのは飲料水の水質基準で、これが問題になるのは原発の排水を人間が飲むときだけだ。福島第一原発の湾内のトリチウム濃度は数ベクレル/kgであり、そのまま飲んでも人体に害はないが、現実的な問題は魚に蓄積された放射性物質を摂取するリスクである。

トリチウムは水に溶けるので、海水から魚の体内に吸収されるが、水と一緒に排出されるので生物濃縮は起こらない。したがって原発から排出されるトリチウムが、魚を食べる人間の「DNAに付いて白血病を起こす」ことはありえない。

飲料水の水質基準と原発の排水は別の問題である。EU指令の100ベクレルも米EPAの740ベクレルも飲料水の水質基準(WHOの水質基準は1万ベクレル)だから、それを基準としても、福島の魚からそれ以上検出されない濃度まで排水を薄めて流せばいいのだ。

世界的には原発からのトリチウム排出は禁止されておらず、日本でも他の原発からは今でも排出されている。なぜ福島第一原発のトリチウムだけが危険なのか。

福島第一ではトリチウムを完全に除去できないため、トリチウム水が100万トンも貯まり、毎日5000人が人体に無害な水をタンクに入れる作業を続けている。元首相が放射能デマで恐怖をあおると、事故処理がおくれて福島県民が迷惑する。このツイートは削除して訂正すべきだ。