昨日4月4日のミヤネ屋(読売テレビ系)の報道に、明らかな事実誤認とによる人権侵害があったことを皆さまにお知らせしたいと思います。
放送法第四条 三に、「報道は事実をまげないですること」とありますので、これは明らかな放送法違反となります。
こうなってくるとワイドショーに公共の電波を格安で使わせる必要が本当にあるのか?最近とみに疑問に思っております。
問題は、昨日保釈されたピエール瀧さんの事件に触れた時に起こりました。
この時点では、まだ保釈はされておらず、番組はピエール瀧さんの今後について、コメンテーターとMCの宮根氏のやり取りの中で起こりました。
番組のコメンテーターは以下の方々。
・原 晋氏 青山学院大学 陸上部 監督
・三輪 記子氏 弁護士
・春川 正明氏 読売テレビ報道解説委員長
一番の問題は、青山学院の原晋監督です。
そのままを記載します。
「秋葉原の事件を忘れてはなりませんよね。車で暴走し多くの人を傷つけたという事件もありましたしね。」
何を言っているのか?一瞬頭の中が???でフリーズしたほどです。
秋葉原の事件と言えば、今でも私もまざまざと覚えていますが、トラックで突っ込み通行人を殺害したあの事件ですよね?
あの犯人薬物なんか使用してませんよ?全く無関係です。
明らかなる事実誤認で、こんな風に言いきられてしまったら、あの凶悪通り魔事件がまるで薬物による影響で凶行されたかのようです。こういうコメンテーターの無知な発言によって、薬物問題のスティグマが強化されていくのは、実に恐ろしい事です。
百歩譲ってですよ、危険ドラッグが蔓延した際の、池袋の事故を言っていたとしたら、あれは危険ドラッグの取り締まりが、成分の過度な規制という方向にいったための、明らかな対策のミスリードから来ています。背景にあった当時喧々諤々議論された社会問題について全くご存じないようですね。
原監督、あなたのチームでも報道された事件があったのですから、事実を知りもしない人に、ひどいスティグマを貼られたらどう思うか?この気持ちは良くお分かりのはずですよ。いい加減な知識で、間違った情報を発信しないで下さい。
我々依存症者の家族の気持ち分かりますか?この件、事実誤認であること、謝罪訂正をお願いします。
さらにこの人大丈夫?と思ったのは、読売テレビ報道解説委員長の春川正明氏。
この人が解説の委員長って、読売テレビの解説員の質はどれほど低いのでしょうか?
発言をそのまま書きます。
「そういう影響で今までもやっぱりその虐殺事件みたいな可能性もあるじゃないですか」
はぁ?コカインで虐殺事件?一体いつそんな事件が起こりました?
また、コカインによる虐殺事件の可能性って、そんな研究発表見たことないですよ。
可能性があると、読売テレビの解説委員が明言したんですから、その旨を証明して下さい。
できないのであれば、この件に関しても、きっちりと謝罪及び訂正の報道をすべきです。
この後MCの宮根氏が、盛んに
「薬物のその先に他者加害をする可能性がある!だから厳然たる処罰をしなくてはならない!」
ということを力説していましたが、そんなことを言ったら他者加害の可能性なんて、この世の全員がもっている訳で、むしろ殺人事件なんて、薬物使用をしていない人間の方がずっと多く起こしているじゃないですか!その可能性をもっていると言うだけで、厳しく取り締まられるようになったら、完全なる監視社会ですよ。そういう世の中になって欲しいと思っているんですか?
典型的な「薬物叩きで自分の道徳的優位性」を発信したい人ですよね。
だいたい、坂上忍さんの件の時にも言いましたが、テレビのMCやる人の中で、ご自身が事件を起こしていたり、不倫だ隠し子だって騒がれた人に限って、薬物叩きで「立派で、清廉潔白な人」を演じたがる傾向にあります。これこそまさに「違法薬物マウンティング」ですね。
そもそもコカインによる危険運転事件なんて、日本ではもしあったとしても、飲酒運転に比べたら、ずっとずっと少ないです。車での危害を言うなら、アルコールによる飲酒運転について、もっとその危険性を伝えるべきです。
また、大量殺人事件で言うなら、ギャンブル依存症による事件の方が、よほど起きていると思うし、記憶に残っています。
例えば、2001年に起きた、武富士弘前支店の放火殺人事件。5人もの方が焼死しました。
あれは、競輪による借金が原因とされています。
また、私が忘れられないのは、1999年に起きた、長崎・佐賀連続保険金殺人事件。
ギャンブル依存症だった愛人に競艇他のギャンブル費用を貢ぐため、夫、そして実子の次男まで保険金目当てに殺害した事件がありました。
また2015年に起きた、名古屋ラーメン店殺害事件。
ぱちんこのお金欲しさに、以前勤めていた店に強盗に入り、2人を刺殺した事件で、犯人のFacebookにはパチンコに興じている写真ばかりがUPされていると、まとめサイトなどで話題になったものです。
このようにアルコールやギャンブルというのは、合法ゆえにさまざまな重大問題を引き起こしているにもかかわらず、その件に関しては、企業に対する配慮からか?真実を追求せず、違法薬物の自己使用者に関してはまるで極悪人になる可能性があるかのように仕立て上げる。ミヤネ屋は、明らかに情報をねじ曲げて伝えています。
この中で、唯一薬物も問題に対する、有益な情報とコメントをして下さったのが、女性弁護士の三輪記子氏。
薬物事犯に対し必要以上に社会が罰するのではなく、治療に繋げるべきという、今では既に当たり前となってきた、本流を話して下さり我々としても大変心強く思いました。
また「他者加害を起こした場合と、薬物の自己使用は全く違う。ただの自己使用の人をここまで追い詰めたら、依存症で苦しむ人達が声を上げにくくなる」と、私たちの立場を理解した、しかも至極まっとうな発言をして下さっています。
全く無知で知識もない、3人の男性に囲まれて、パワハラのように意見を叩きつぶされていく、三輪弁護士にTwitterでも同情が集まっていました。
さて、放送法第九条にはこのように記載されています。
第九条 放送事業者が真実でない事項の放送をしたという理由によつて、その放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人から、放送のあつた日から三箇月以内に請求があつたときは、放送事業者は、遅滞なくその放送をした事項が真実でないかどうかを調査して、その真実でないことが判明したときは、判明した日から二日以内に、その放送をした放送設備と同等の放送設備により、相当の方法で、訂正又は取消しの放送をしなければならない。
2 放送事業者がその放送について真実でない事項を発見したときも、前項と同様とする。
ミヤネ屋さん、我々から訂正報道の請求を起こした方が良いですか?
それとも自主的に行う用意がありますか?
当会までご連絡下さい。お待ちしておりますね。
田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト