統一地方選前半戦に見た政治の未来

統一地方選の前半戦が終了しました。維新が大阪を制したとか、自民が過半数を制したといったニュースが並びますが、個人的には無投票当選議員が612名もいたことが衝撃的でありました。この数は今回対象議席の4分の1を占めます。しかも必ずしも地方ばかりではなく、大阪、名古屋、横浜でもそのような選挙区があったということは衝撃であります。

政治家へのなり手がない、興味がないなどいろいろ要素は考えられると思いますが、私はもっと単純に争点がないという究極の潜在的問題を呈しているように感じます。

国会議事堂(写真AC:編集部)

政治といえば与党野党、そしてそこにつきものは右派左派であります。では右派左派は何処から来たのでしょうか?実は今からちょうど230年前の1789年に始まるフランス革命の時であります。フランス革命はアンシャンレジームの崩壊、つまり絶対王政と封建制度が崩壊し、憲法が生まれる時であります。世界の政治史の中では最も注目される歴史的革命の一つであり、同様なものが英国のピューリタン革命、アメリカの独立戦争ですがフランス革命はそのあとの共産主義につながる極めて意味ある思想と社会の革命であります。

その際、フランス議会において二院制にするか、および国王に拒否権を与えるか、の二点で大きく意見が分かれます。そして議長席からみて左側に一院制、国王拒否権反対派が陣取ります。これが左派の始まりとされます。私は大学の授業で習いました。この話はかなり面白いので興味ある方は掘り下げてみたらよろしいかと思います。

ポイントは争点がたくさんあるときは意見が対立する構図ができるのですが、時代とともにそれが中庸化していきます。絶対王政もファシズムも共産主義も時を経て民主化が進み、政治がほぼ同じ土俵の中でよい悪いという議論を重ねているのが現代であります。一般的には中道右派、中道左派と称していますが、同じ派閥内でも温度差が生じています。

例えば石破さんは自民党の中で孤高の立場を貫いていますが、一定の支持があります。二階幹事長が次回の都知事選には小池さんを支持すると述べています。これは政治の目的が絶対多数の有権者に対して心地よい言葉を語り掛け、勝つための選挙であるとも言えます。

海外でも英国与党は党内の乱れでEU離脱が迷走し、挙句の果てにメイ首相が野党である労働党に協力を申し入れる事態になっています。これは争点が微妙すぎて政党政治の根幹に疑問符が付いたのかもしれません。

アメリカでも共和党出身であるトランプ大統領の方針に造反がそれなりに出ますし、議会でのトランプ大統領の演説中、民主党がその内容に拍手をすることもあります。つまり対立構図が非常に接近しており、だれのメリットになるのか、という立ち位置によって右にも左にも振れるというのが現代政治であります。

そうなるともともと日本では極論が少なく、ほぼ単一民族の国民が生み出す思想の差異は本来では欧米ほどではなく、むしろ作られた右翼左翼だったのかもしれません。その事実、組合や会社、各種業界団体、農協、医師会などを抑えた候補者の勝ちです。となれば、選挙民は所属するところからの支援要請に基づき、皆に歩調を合わせる形骸化した政党政治ではないでしょうか?

今回の選挙、もう一つ目立ったのが野党がふがいなかった点です。形の上では立憲民主が票を伸ばしていますが、国民民主党が半分近くに減らしています。与党が嫌だという人たちの選択肢が増えた中で明白な主張がなかった点は野党の存在価値が真剣に問われます。

このままでいけば政治はどうなるのでしょうか?私は極論をすると野党は企業でいう「社外取締役」でご意見番になってしまうのではないかとみています。ただし、与党の運営はもっと難しくなり、意見が割れ、英国化する可能性はあります。今は安倍総理が文鎮のように押さえていますが、次の首相の内部統制手腕が十分でなければ「メイ首相化」しやすい状況になるかもしれません。

フランス革命から230年経った今、政治は新たな道を探っていくのでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年4月8日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。