If the Fed had done its job properly, which it has not, the Stock Market would have been up 5000 to 10,000 additional points, and GDP would have been well over 4% instead of 3%…with almost no inflation. Quantitative tightening was a killer, should have done the exact opposite!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2019年4月14日
FRBが適切に仕事をしていたら(そうではなかったが)、株式市場は5000〜10,000ポイント上がり、GDPは3%ではなく4%をはるかに上回っていただろう。量的引き締めはキラーだった。FRBは正反対のことをすべきだった!
トランプ大統領が、FRBへの介入を強めている。理事にB級の身内を2人指名しただけでなく、パウエル議長にも利下げを要求している。Economist誌も、カバーストーリーで中央銀行の独立性が失われることを警告している。
しかし政府を私物化するトランプの立場からみると、コストなしで景気を刺激できる金融政策はフリーランチだ。株価は上がり、GDPも上がる。インフレになるかもしれないが、そうなってから考えればいい。
こういう考え方は新しいものではない。かつて中央銀行は政府に従属し、政治家の要望に応じる機関だった。不景気のときは金融を緩和するが、景気がよくなっても引き締めないのでインフレになり、これによって名目政府債務が増え、それによってインフレが加速する悪循環が起こったのが、1970年代のスタグフレーションだった。
このとき「インフレで景気はよくならない」と指摘したのが、フリードマンの自然失業率仮説だった。インフレで雇用が増えるように見える「フィリップス曲線」は錯覚で、長期的には人々がインフレ予想を織り込んだら雇用は増えないので、雇用と物価は独立なのだ。
自然率仮説は大論争を呼んだが、80年代の英米の経験で正しいことが証明された。このため90年代には中央銀行の独立性が保障され、インフレ目標のような中立的な指標で運営されるようになった。日本でも1998年の日銀法改正で、日銀の独立性が明記された。これもバブル期に政治家が抵抗して利上げが遅れたことが教訓だった。
だが今世界的に起こっている長期停滞(低成長・低インフレ・低金利)は、こうした中央銀行のパラダイムに転換を迫っている。ゼロ金利で金融政策がきかなくなり、中央銀行がインフレを起こそうとしても起こせない。インフレを心配する時代ではなくなったのだ。
他方で国債の発行が増え、その残高は日銀券をはるかに上回る。したがってマネタリーベースだけを管理しても経済をコントロールできないので、政府と日銀のバランスシートを統合した債務管理が必要になる。
日銀が国債を買っても、マネタリーベースが増えた分だけ国債が減る。財務省が財政赤字を削減する方針を打ち出しているので、政府と日銀を統合した債務残高は減り、インフレにはならない。それがわかっている限り「インフレ期待」は起こらない。
これはよくも悪くも、フリードマンのいう財政と金融の独立性が失われたことを意味する。Blanchard-Summersも指摘するように、今や経済調節の主役は財政当局であり、中央銀行はそれに協力する機関なので、その独立性には意味がないのだ。
日本の場合、日銀政策委員のほとんどは安倍首相の指名したB級のリフレ派なので、すでに独立性は失われているが、日銀は無力なので実害はない。それより国債のマネタイゼーションのような非伝統的な財政政策をコントロールする新しいルールが必要である。