社内の「火中の栗」を拾わないのであれば、結局なにも責任をかぶらないのと同じですが、このような危険な栗を拾ってはいけません。あなたが、拾わなければいけない栗は、火中といっても救いようのある「火中の栗」のことです。
落としどころが見えない「火中の栗」は絶対に拾ってはいけません。ここが判断の難しいところですが、火中の栗の中には、うまくいけば「化ける栗」も確かに存在します。が、それはあくまで「うまくいけば」なのです。
この「うまくいった姿」が見えないのに栗を拾っても、自分が大やけどを負うだけです。責任をかぶるときは、必ず落としどころを想定してかぶってください。この大原則さえ守っていれば、かぶった責任が大きな火に燃え上ってしまうことはありません。
美味しい栗とは、赤字続きで利益が回収できず潰れそうなプロジェクトや、代金未収の案件のこと。既に、火中の栗となって、火を噴いていますが実は美味しい栗であることが少なくありません。
ここで最も重視されるのは、代金の回収や、顧客との関係維持、撤退に向けての事務作業などになります。プロジェクトの成功ではなくクロージングです。
これまでも八方手を尽くしてきたわけで、正直そんなもの誰がやろうと、成果を改善することはできないでしょう。ならば、被害が最小な落としどころに収めるよう努力した方が遥かにマシ。
そして実際に撤退となりますが、評価は落ちるどころか上がります。そもそも瀕死状態ですから、成果は求められません。やるのは事務処理や調整だけなので、がんばれば結果が出て、火事場の処理がうまい人という印象になるのです。
さらには、火の中に飛び込む度胸のあるヤツ、という評価も得られます。ポイントは「撤退寸前で手を差し伸べる」ことです。
敗戦処理なら、評価も上がりやすい。トラブルの最終処理を仕上げることで、会社も助けて、上司も助けて、人望も集まる。これこそがクローザーの役割です。ただし、火消しが上手くいかない場合は、批判のほこ先が向かいますから注意が必要です。
新刊紹介
『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員