「電波社会主義」では日本は5Gに取り残される

4月18日に電波法改正案が、衆議院総務委員会で可決された。今回の改正では、昨年(2018年)の規制改革推進会議で電波オークションが提言されたことを受けて「周波数の経済的価値を踏まえた割当手続」が導入される。

(写真AC:編集部)

ところがその改正の直前に駆け込みで、総務省は第5世代移動通信システム(5G)の電波割り当てを発表した。これは「美人投票」と呼ばれる比較審査で電波を割り当てるものだ。この調子では法律を改正してもオークションは実施されず、日本は5Gで世界に取り残されるおそれが強い。

今の5Gの帯域はスマホには使いにくい

今回の美人投票は、3.7/4.5GHz帯と28GHz帯で行われた。使いやすい3.7GHz帯の審査結果では、NTTドコモとKDDIが1位と2位で2枠取ったが、ソフトバンクは最下位で1枠しか取れなかった。この最大の原因は、審査基準の中の「5G基盤展開率」で、ドコモが97%、KDDIが93%だったのに対して、ソフトバンクは64%だったからだ。

基盤展開率というのは人口カバー率ではなく「日本全国を10km四方の4500区画に分け、それをいくつカバーするか」という基準だが、ソフトバンクはあえてこれを無視し、従来通りの人口カバー率を基準に基地局を展開する予定だ。

その原因は、3.7GHz(ギガヘルツ)以上の高い周波数帯は、スマートフォンに向いていないからだ。総務省に提出したドコモのサービス展開イメージによると、セル(基地局の電波の届く範囲)の半径は最大100mしか取れない。基地局の間隔を100m以内にしないといけないので、すべてのビルの屋上に基地局を置かないとカバーできない。

ドコモの計画では、現在の100倍の基地局が必要になる。不可能ではないが、大都市以外で採算を取るのはむずかしい。端末の移動するスマホでは、セルから外れると電波が切れてしまう。現実には4Gと併用の端末になるだろうが、高価になるだけでメリットがない。無理してカバー率を上げなかったソフトバンクの判断は賢明である。

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