ビジネスが難しい国、中国とどう向き合うのか?

あのアマゾンが中国内のネット通販事業から撤退すると発表しました。一部の事業は残すようですが、実質的に敗北の退場となります。理由はアリババと京東集団がネット通販市場をほぼ分かち合い、アマゾンがビジネスを継続する余地がなくなったから、とされます。

ウォールマートも中国参入に失敗し、京東集団に売却しています。中国で勝てないのはアメリカ企業だけではなく、あのサムスンもスマホ事業ではほとんど壊滅的状態となっています。日本企業もユニクロのようにうまくやっているところもありますが、長い歴史の中ではずいぶん煮え湯を飲まされてきました。

日本が中国にかかわった最大の事業は新日鉄による宝山製鉄所でしょう。70年代当時、中国には鉄を作る技術がなく、日中友好の懸け橋として新日鉄の技術移転がなされたのです。その後、日中間でこの事業をめぐり様々なトラブルがあり山崎豊子氏の小説ネタにもなっています。

基本的なスタンスとしては中国は工業技術を外部から取り入れるもののあくまでも将来、自立する前提で海外企業の技術、ノウハウを踏み台にすると断言してよいかと思います。そして国内でその産業が自立し、成長を続けると次に海外への進出というパタンを踏みます。それが中国覇権の構図であり、アフリカ進出はその好例でありましょう。

インドネシアの大統領選挙はジョコ大統領が二期目の当選を確実なものにしていますが、産経はジョコ氏の対中国の外交通商姿勢について厳しいものが予想されると報じています。同氏は基本的には中国寄りでありますが、鉄道事業の失敗を含め、国内で中国に対する拒否感が高まっていることでその政策が注目されるとまとめています。

同様の懸念はニュージーランドの38歳の女性首相、アーダン氏も抱えているとやはり産経が報じています。

これは中国が覚醒した獅子のごとく、それまでアメリカを軸とした工業や産業の展開の流れを中国ブランドとして世界制覇を狙う方向性を持っているものと思われます。これが成功するのかどうかは何十年か経たないと分からないでしょう。ただ、ファーウェイのように技術力と営業力、影響力を兼ね備えた会社は今後、一つ、また一つと出てくる公算は大いにありそうです。

一方で諸外国は中国のやり方に閉口しています。特にアフリカ諸国では支援と称して中国人労働者を大挙して送り込み、マネージメントは全て中国側が仕切るため、アフリカ諸国は労働力の提供にとどまり、技術移転がされないという問題が生じています。上述のインドネシアでも「中国人労働者の入国も増え、13年に1万5千人だった中国人労働者は18年には倍増した」と産経が報じています。

かつて日本が東南アジア諸国などに海外開発支援を行っていた際、カネも出すが日系企業がそれを落札するという「Tied Loan(紐付きローン)」という悪名高き円借款がありました。あまりにも不評で確か80年代には徐々に減らして今ではなくなっているはずですが、中国のAIIBなどは一種のTied Loanであるといってよいでしょう。これが不評の理由の一つであります。

海外進出が上手だったのはアメリカです。なぜ、日本がアメリカに嫌悪感を抱かないのかといえば文化的に長期にわたり影響を受け続けたことが最大の要因でしょうか?戦後、我々はアメリカの食品から映画、音楽、ファッションなどあらゆる分野において洗脳に近いアメリカ化を遂げています。この流れにビジネスが上手く乗ったといってよいのではないでしょうか?

一方、中国の場合、ビジネスオンリーで攻めてくるのです。マネーと人の攻勢、更には政界などのキーパーソンを抱き込むその手法は一般市民を置き去りにした一種の政治決着の様相が強くなります。我々は中国映画を見たことがありますか?音楽は知っていますか?ファッションは?ほとんど誰も知りません。ここが中国の稚拙な海外戦略なのだろうと思います。

逆に日本の文化は中国で一定の制限があるものの人気があるとされています。ユニクロが成功しているのも日本ファッションだからであり、一部の芸能人が中国で高い人気を誇っていることも文化輸出の一環です。個人的には日本が中国と向き合うには文化輸出をしながら中国にはできない技を磨き続けることなのだろうと思っています。アメリカには中国と上手くできなくても日本には潜在的にはできる能力があると私は考えてます。

上述の宝山製鉄所は新日鉄との合弁として2017年には40周年を迎えて苦労を乗り越えた現在があります。個人的には日本の対中国スタンスとしては中国に影響を与え続けられる国家として常にリードするポジションを維持すべきではないかと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年4月19日の記事より転載させていただきました。