日本型システムでは、全ての人事権は人事部が掌握しています。現場に権限が付与されることもありますが、最終権限は人事部にあります。人事権を握っているからこそ影響力を行使できるのです。今回は、拙著『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)のなかからエッセンスを紹介します。
政治も同じです。例えば、幹事長は、金銭に関する出納、選挙における割り振りや、公認・非公認、配分するポストの全権を担っていることが少なくありません。人事権があるからこそ、政治家は陳情を聞き、影響力を誇示することも可能になるわけです。
政治家にとって、人事権とは強さの象徴であり、人事権を強固にすることによって権力の保持につながっていきます。
社内のケースを挙げれば、管理職と平社員の決定的な違いは人事権にあります。平社員がどんなに権利を主張しても、管理職に「こいつは面倒なヤツだ」と睨まれて終わりです。意にそぐわない社員はどんなに成果を上げていても報復の対象となります。
人事を左右するのは、管理職以上の権限であり、平社員にその権限はありません。ところが、平社員であってもそれは人事権を所持する決裁権限者との接触頻度を高めることで、自らの評価を挙げることができます。
例えば、役員に名前を覚えてもらうこと。最初は挨拶でも、少しずつ会話の量を増やして長い会話をするようになれば、必然的にプライベートの話をするようになります。プライベートの話をするようになると、仕事の話をする以上に、親密感が増します。
役員は、平社員のプライベートの話を聞く機会が少ないので、記憶に残ることが増えるでしょう。良好な関係を築いておけば色々と相談することもできます。役員というのは意外にも、プライベートの相談事を好みます。また、役員と関係性を構築できれば、いまの上司に対する抑止力にもつながります。
参考書籍
『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員